H*Fから少女Aへ
フランシスさんが私より少し遅れて合流する。
その装備は貴族を思わせるようなひらひらフリルがいっぱい付いた煌びやかな衣装だった。
武器もフルーレと来れば尚の事貴族らしい。緩くウェーブした金髪が動く度に揺れて格好良かった。
準備は出来たか、とアーサーさんが皆に声を掛けて、その問いに画面の中と外でこくり、と頷く。
暫くしてダンジョンの扉が開くいつものエフェクトが表示されて、皆ダンジョン内に転送されていく。
私も転送されて画面が切り替わり、目の前に現れたのは火山の内部らしい、所々赤く光る洞窟だった。
と言っても天井は大分高くて狭い感じがしない。初めて入るダンジョンの景色にほわあ、と呟いて、補助スキルを発動。
他の人達も自分やパーティ全体に補助スキルを掛けていて、準備万端のようだった。
「それじゃあ壁はフランシスに任せていつもの作戦で行くんだぞ!」
「ってそれって俺本当に壁じゃない!ひどい!もっとお兄さんを頼って!」
「Lv低い癖に偉そうにすんな髭」
「坊ちゃんの方が低いでしょ!」
うわぁん、とフランシスさんが泣くエモをするけど、アルフレッドさんとアーサーさんは見事にスルーしているようだ。
イヴァンさんは私の方に近寄ってきて、フランシス君って面白いよね、と笑っていた。こっちもこっちで完璧にスルーしている。
でもいつもの作戦って言うのが私には分からなかった。どう言う作戦なんだろう?フランシスさんが敵を釣ってくるのは間違いなさそうなんだけど。
疑問に思った事を発言しようとキーボードを叩いていたら、その前にイヴァンさんが作戦について教えてくれた。
なんでも、フランシスさんが最初に敵に攻撃を仕掛けてヘイトを稼ぐ。その間に他の皆は思い思い好きな敵を攻撃していく…と言うものらしかった。
それって敵のターゲットにされているフランシスさんが一番大変な作戦なんじゃないだろうか…。攻撃対象がバラバラだったらその分敵を倒す効率も悪くなる。イコール受けるダメージも大きくなる。
本当に壁役と言っていい位の役割だ。あれ、そもそもこれって作戦の内に入るんだろうか?適当に殴っているだけじゃない?
そんな作戦で大丈夫なのかな?と首を傾げたけれど、私が考えている間にも話はサクサクと進んでいて、結局いつもの作戦で行く事に決まったらしい。
「あの、私…回復した方が良いですか?」
「どっちでも構わないよ〜。さんが好きな方で良いと思うなー」
「そう…なんですか?フランシスさんが構わないんだったら殴りたいんですけど…死にそうじゃないですか?」
「ああんちゃん優しい!天使に見える!いや女神!」
(えええー)
フランシスさんが投げキッスのエモをして(不覚にも格好良いと思ってしまった)、返答に困ってしまう。けど、アーサーさんがそこで話をバッサリ切って早くダンジョンを進む事を催促したのでちょっとほっとした(ごめんフランシスさん)。
洞窟のマップでもやはりダンジョンに変わりはないので分かれ道が沢山あったり、行き止まりで敵が屯っている所もある。
今回の目的はレアドロップなのでそのアイテムを落とす敵が居るルートを片っ端から潰していく、と言う事になった。
「HAHAHAー!行けえフランシス!」
「見よ、華麗なるお兄さんの舞いげふぅっ!」
「あああフランシスさああん!」
「おい髭!ちゃんとタゲ維持しろよ!こっち来るじゃねえか!」
「あははー範囲楽しいねー」
道中の会話はそれはもう、賑やかだった。文字打っている暇があったら殴れと言われてしまうかもしれないけど、会話の中に入らなければ気が済まない、そんな状況だったのだから言い訳に聞こえても仕方ない。
本当に楽しくて、序盤の方では苦笑だけに留まっていた私も、ダンジョン中盤頃になればノリに乗って叫び放題してしまっていた。
主にフランシスさんが大変な事なるこの作戦はそれはもう、カオスとしか言いようがない程の混沌ぶりだった。
敵を釣ってきたかと思うとアルフレッドさんが銃で乱射をし始め、アーサーさんが召喚魔法をぶち噛まし、イヴァンさんが範囲魔法で敵を凍らせる。
後衛の人達が皆範囲スキルを持っているので、私以外の三人は全員でスキルを連発しているようだった。敵に向かっていくスキルのエフェクトが派手過ぎてどの敵がダメージ受けているのか正直分からないよ、私。
ヘッドフォンからはちゅどーんとか、ばきゅーんとか、ずどどどどとか、引っ切り無しに轟音が鳴り響いていて、ゲームの中じゃなかったらフランシスさんが絶対に巻き添えになっていそうな予感がひしひし伝わる状況が広がっていた。
私はそんな人達に混じってちまちま敵を殴り続ける訳にもいかず、早々に武器を剣から杖に持ち替えてフランシスさんの回復に専念していた。
あああ、自分のキャラなんだから一番よく聞こえる筈の回復スキルの音が範囲スキルの爆音に掻き消されてよく聞こえないよ。なにこのカオス、私なんだか楽しくなってきた。
画面の外でお腹が痛くなるほど笑いながらフランシスさんに回復魔法を掛けて、切れかかっていた補助魔法もパーティ全体に掛ける。
その間にも範囲スキルの嵐は止む事をせず、敵が全て消えるまでそれは続いていた。
後衛の三人へのダメージはほぼゼロに近くて、壁の役割は十分にフランシスさんが果たしているようだった。私へのダメージも一回だけしか来なかったので、回復魔法を使う自分にとってはターゲットの指定がやりやすくて良かった。フランシスさんはぼろぼろだったけど。
それに、効率が悪そうに見えたターゲットを固定しないランダム戦法はスキルの威力が凄い事になっていたので、一体一体潰していくより範囲の方が効率が良い事に数回戦って気付いた。
でもそれが出来るのはこの三人だからであって、他の別の人がやるのであればきっと一体ずつ潰していった方がいいんだろうな。どう言う育て方したらあんな軽く四桁が出る威力が出せるのかなあ。アルフレッドさんとか五桁行ってた気がするよ!もう驚きを通り越して何も言えないよ!
「ふー、一通り回ったかな?」
「みたいだな。一旦戻るか」
「…お兄さん…もうボロボロだよ…」
そんなこんなでダンジョンの最奥に到達したのは大分早い時間だった。初めて行った時はぎりぎりだったと言うのに、どれだけ凄いんだこの人達。
最後の敵を倒した場所から程近い通路に外に出れる装置を見つけ、一番乗り!とはしゃいでアルフレッドさんが走っていった。私もそれに続き、装置に乗ると画面が切り替わる。
するとダンジョンに入る前に居たフィールドに画面が切り替わり、今まで入っていたダンジョンの入り口が目の前に表示されて、帰ってきた事が分かる。
終わったあ、とぐっと背伸びをしてマウスとキーボードを操作していた手をぐりぐり回す。首も回してみたら、こき、と鈍い音が鳴った。
「お疲れ様でした〜」
「お疲れなんだぞ!」
「お兄さん補給行ってくるわ…」
「はーい行ってらっしゃい」
次々とダンジョンからパーティメンバーが帰ってきて、それぞれバラバラに行動し始める。
フランシスさんは一番アイテムの消費が多かったから、ポーションやエーテルの補給に、アーサーさんも魔法連発していた所為でエーテルが尽きてしまったらしいのでその補給。
イヴァンさんとアルフレッドさんはダンジョンの前で待機していて、私は溢れ返りそうなバッグの中のドロップ品を処理すべく、急いで街に戻る事にした。
敵を倒す毎に表示されるシステムログの流れが早過ぎてどの敵がどれだけの経験値をくれたのか、どのアイテムを落としたのか全く分からなかったけれど、いつの間にかバッグの中は知らないアイテムやゴミなどでいっぱいになっていた。
中にはまあまあな値段で取引されるようなアイテムもあって、今更喜んだのは言うまでも無い。どうせならドロップした時に喜びたかったな…あのカオスっぷりじゃ無理だけど。
他にもアクセサリーや一部の装備品なども入っていて、あまり数値の高くない装備は直ぐにお金にし、使えそうな装備は倉庫の中に入れておいた。装備出来るLvが50なので装備出来ないのが悔しかったけど仕方ない。
でもさっきのダンジョンで経験値も沢山入っていて、もうすぐ上がりそうだった私のLvは敵を倒している間に上がっていた。だから倉庫行きの装備が日の光を浴びるのはそう遠くないだろう。
Lvが上がった時は皆からおめでとう、言われてこんな時にパーティ組んでて良かったなあと思ってしまった。だってソロだと誰も言ってくれないから…うう。
「あ、ねえねえ。耀君も来るって言ってるけどもう一回行く?」
「良いけどお兄さん今度は休むよー…疲れたし」
アイテムの整理をしているとイヴァンさんが突然そう発言する。フランシスさんはもうお疲れ気味のようだったけれど、アルフレッドさんもアーサーさんも二回目に行くようだった。
私はどうしようか迷ったけれど、後ろで遊んでいても大丈夫だよーと言われたのでちょっと気が引けながらもご一緒する事にしました。
あのカオスっぷりならきっとフランシスさんが敵を釣ってこなくてもごり押しでなんとかなるんだろうなあ。回復居なくても大丈夫そうな気がするし。
でも壁が居ないのでダメージは自分達に来る筈だし、後ろで遊んでいても大丈夫と言われたけど今回も回復役として参加する事にしよう。
今回はもう一人新しい方も一緒に来てくれるみたいだから一層チャットが騒がしくなるんだろうな。五人であのカオスぶりだったのに、今度は六人のフルパーティだ。あれ以上のカオスなんて想像出来ないんだけど…一体どうなるんだろう…。
楽しみだけどちょっと不安に思いながらエーテルの補給をしてフィールドに戻る。今度は私が一番遅かったらしく、他の皆は既にダンジョン前に集まっているようだった。
「それじゃあアーサー君、耀君呼んであげて」
「あー、リーダー俺だったか。ちょっと待っとけ」
アーサーさんがそう言って暫くすると、ぱっとシステムログが表示される。
その後直ぐにダンジョンが開くエフェクトが表示されて、耀さん、と言う方も直ぐ近くに居た事が分かった(ダンジョンの入り口は人が多いからパーティメンバー以外のキャラを表示させてなかったのだ)。
次々転送されていくメンバーに続いて最後に私がダンジョンの中に入ると、見慣れぬチャイナ服を着た方が居たので、それが耀さんだと分かった。
挨拶も程々に作戦会議が始められるけれど、やっぱり一回目と同じようなやり取りが繰り返されて作戦と呼べなさそうな作戦に決められる。
本当に大丈夫なのかなあ、と思いつつ私は回復役に回る事を告げて、後衛の人達の後ろを着いていく事にした。
結局本日二回目のダンジョンは、一回目と同じく大変カオスな事になりました。
範囲攻撃をする筈だったアルフレッドさんが弾切れで何故か銃で敵を殴ったりしてちょっとときめいたり(殴り魔じゃなくて…なんだろう、殴り銃?とにかく殴り職と同じ香りがした)、そのダメージも凄い数値だったりしてびっくりしたり。
イヴァンさんは相変わらず範囲魔法を連発していたけど、元々MPが高い所為か全然MPが枯渇する場面を見る事が出来なかったり。
逆にアーサーさんはMPの消費が激しい召喚を繰り返していたのでエーテル使い放題していたけど、あれだけ使っているのによく足りなくならないよなあ、と感心したり(後で聞いたらスロット数個エーテルが占めてると言っていた)。
私は範囲の回復魔法をしながらそんな三人の攻撃っぷりを見て呟く。廃人だなあ、と。
そして後衛職が頑張っている間、フランシスさんと耀さんは後ろでそのカオスっぷりを見て黄昏ていたのは、言うまでもない。
その装備は貴族を思わせるようなひらひらフリルがいっぱい付いた煌びやかな衣装だった。
武器もフルーレと来れば尚の事貴族らしい。緩くウェーブした金髪が動く度に揺れて格好良かった。
準備は出来たか、とアーサーさんが皆に声を掛けて、その問いに画面の中と外でこくり、と頷く。
暫くしてダンジョンの扉が開くいつものエフェクトが表示されて、皆ダンジョン内に転送されていく。
私も転送されて画面が切り替わり、目の前に現れたのは火山の内部らしい、所々赤く光る洞窟だった。
と言っても天井は大分高くて狭い感じがしない。初めて入るダンジョンの景色にほわあ、と呟いて、補助スキルを発動。
他の人達も自分やパーティ全体に補助スキルを掛けていて、準備万端のようだった。
「それじゃあ壁はフランシスに任せていつもの作戦で行くんだぞ!」
「ってそれって俺本当に壁じゃない!ひどい!もっとお兄さんを頼って!」
「Lv低い癖に偉そうにすんな髭」
「坊ちゃんの方が低いでしょ!」
うわぁん、とフランシスさんが泣くエモをするけど、アルフレッドさんとアーサーさんは見事にスルーしているようだ。
イヴァンさんは私の方に近寄ってきて、フランシス君って面白いよね、と笑っていた。こっちもこっちで完璧にスルーしている。
でもいつもの作戦って言うのが私には分からなかった。どう言う作戦なんだろう?フランシスさんが敵を釣ってくるのは間違いなさそうなんだけど。
疑問に思った事を発言しようとキーボードを叩いていたら、その前にイヴァンさんが作戦について教えてくれた。
なんでも、フランシスさんが最初に敵に攻撃を仕掛けてヘイトを稼ぐ。その間に他の皆は思い思い好きな敵を攻撃していく…と言うものらしかった。
それって敵のターゲットにされているフランシスさんが一番大変な作戦なんじゃないだろうか…。攻撃対象がバラバラだったらその分敵を倒す効率も悪くなる。イコール受けるダメージも大きくなる。
本当に壁役と言っていい位の役割だ。あれ、そもそもこれって作戦の内に入るんだろうか?適当に殴っているだけじゃない?
そんな作戦で大丈夫なのかな?と首を傾げたけれど、私が考えている間にも話はサクサクと進んでいて、結局いつもの作戦で行く事に決まったらしい。
「あの、私…回復した方が良いですか?」
「どっちでも構わないよ〜。さんが好きな方で良いと思うなー」
「そう…なんですか?フランシスさんが構わないんだったら殴りたいんですけど…死にそうじゃないですか?」
「ああんちゃん優しい!天使に見える!いや女神!」
(えええー)
フランシスさんが投げキッスのエモをして(不覚にも格好良いと思ってしまった)、返答に困ってしまう。けど、アーサーさんがそこで話をバッサリ切って早くダンジョンを進む事を催促したのでちょっとほっとした(ごめんフランシスさん)。
洞窟のマップでもやはりダンジョンに変わりはないので分かれ道が沢山あったり、行き止まりで敵が屯っている所もある。
今回の目的はレアドロップなのでそのアイテムを落とす敵が居るルートを片っ端から潰していく、と言う事になった。
「HAHAHAー!行けえフランシス!」
「見よ、華麗なるお兄さんの舞いげふぅっ!」
「あああフランシスさああん!」
「おい髭!ちゃんとタゲ維持しろよ!こっち来るじゃねえか!」
「あははー範囲楽しいねー」
道中の会話はそれはもう、賑やかだった。文字打っている暇があったら殴れと言われてしまうかもしれないけど、会話の中に入らなければ気が済まない、そんな状況だったのだから言い訳に聞こえても仕方ない。
本当に楽しくて、序盤の方では苦笑だけに留まっていた私も、ダンジョン中盤頃になればノリに乗って叫び放題してしまっていた。
主にフランシスさんが大変な事なるこの作戦はそれはもう、カオスとしか言いようがない程の混沌ぶりだった。
敵を釣ってきたかと思うとアルフレッドさんが銃で乱射をし始め、アーサーさんが召喚魔法をぶち噛まし、イヴァンさんが範囲魔法で敵を凍らせる。
後衛の人達が皆範囲スキルを持っているので、私以外の三人は全員でスキルを連発しているようだった。敵に向かっていくスキルのエフェクトが派手過ぎてどの敵がダメージ受けているのか正直分からないよ、私。
ヘッドフォンからはちゅどーんとか、ばきゅーんとか、ずどどどどとか、引っ切り無しに轟音が鳴り響いていて、ゲームの中じゃなかったらフランシスさんが絶対に巻き添えになっていそうな予感がひしひし伝わる状況が広がっていた。
私はそんな人達に混じってちまちま敵を殴り続ける訳にもいかず、早々に武器を剣から杖に持ち替えてフランシスさんの回復に専念していた。
あああ、自分のキャラなんだから一番よく聞こえる筈の回復スキルの音が範囲スキルの爆音に掻き消されてよく聞こえないよ。なにこのカオス、私なんだか楽しくなってきた。
画面の外でお腹が痛くなるほど笑いながらフランシスさんに回復魔法を掛けて、切れかかっていた補助魔法もパーティ全体に掛ける。
その間にも範囲スキルの嵐は止む事をせず、敵が全て消えるまでそれは続いていた。
後衛の三人へのダメージはほぼゼロに近くて、壁の役割は十分にフランシスさんが果たしているようだった。私へのダメージも一回だけしか来なかったので、回復魔法を使う自分にとってはターゲットの指定がやりやすくて良かった。フランシスさんはぼろぼろだったけど。
それに、効率が悪そうに見えたターゲットを固定しないランダム戦法はスキルの威力が凄い事になっていたので、一体一体潰していくより範囲の方が効率が良い事に数回戦って気付いた。
でもそれが出来るのはこの三人だからであって、他の別の人がやるのであればきっと一体ずつ潰していった方がいいんだろうな。どう言う育て方したらあんな軽く四桁が出る威力が出せるのかなあ。アルフレッドさんとか五桁行ってた気がするよ!もう驚きを通り越して何も言えないよ!
「ふー、一通り回ったかな?」
「みたいだな。一旦戻るか」
「…お兄さん…もうボロボロだよ…」
そんなこんなでダンジョンの最奥に到達したのは大分早い時間だった。初めて行った時はぎりぎりだったと言うのに、どれだけ凄いんだこの人達。
最後の敵を倒した場所から程近い通路に外に出れる装置を見つけ、一番乗り!とはしゃいでアルフレッドさんが走っていった。私もそれに続き、装置に乗ると画面が切り替わる。
するとダンジョンに入る前に居たフィールドに画面が切り替わり、今まで入っていたダンジョンの入り口が目の前に表示されて、帰ってきた事が分かる。
終わったあ、とぐっと背伸びをしてマウスとキーボードを操作していた手をぐりぐり回す。首も回してみたら、こき、と鈍い音が鳴った。
「お疲れ様でした〜」
「お疲れなんだぞ!」
「お兄さん補給行ってくるわ…」
「はーい行ってらっしゃい」
次々とダンジョンからパーティメンバーが帰ってきて、それぞれバラバラに行動し始める。
フランシスさんは一番アイテムの消費が多かったから、ポーションやエーテルの補給に、アーサーさんも魔法連発していた所為でエーテルが尽きてしまったらしいのでその補給。
イヴァンさんとアルフレッドさんはダンジョンの前で待機していて、私は溢れ返りそうなバッグの中のドロップ品を処理すべく、急いで街に戻る事にした。
敵を倒す毎に表示されるシステムログの流れが早過ぎてどの敵がどれだけの経験値をくれたのか、どのアイテムを落としたのか全く分からなかったけれど、いつの間にかバッグの中は知らないアイテムやゴミなどでいっぱいになっていた。
中にはまあまあな値段で取引されるようなアイテムもあって、今更喜んだのは言うまでも無い。どうせならドロップした時に喜びたかったな…あのカオスっぷりじゃ無理だけど。
他にもアクセサリーや一部の装備品なども入っていて、あまり数値の高くない装備は直ぐにお金にし、使えそうな装備は倉庫の中に入れておいた。装備出来るLvが50なので装備出来ないのが悔しかったけど仕方ない。
でもさっきのダンジョンで経験値も沢山入っていて、もうすぐ上がりそうだった私のLvは敵を倒している間に上がっていた。だから倉庫行きの装備が日の光を浴びるのはそう遠くないだろう。
Lvが上がった時は皆からおめでとう、言われてこんな時にパーティ組んでて良かったなあと思ってしまった。だってソロだと誰も言ってくれないから…うう。
「あ、ねえねえ。耀君も来るって言ってるけどもう一回行く?」
「良いけどお兄さん今度は休むよー…疲れたし」
アイテムの整理をしているとイヴァンさんが突然そう発言する。フランシスさんはもうお疲れ気味のようだったけれど、アルフレッドさんもアーサーさんも二回目に行くようだった。
私はどうしようか迷ったけれど、後ろで遊んでいても大丈夫だよーと言われたのでちょっと気が引けながらもご一緒する事にしました。
あのカオスっぷりならきっとフランシスさんが敵を釣ってこなくてもごり押しでなんとかなるんだろうなあ。回復居なくても大丈夫そうな気がするし。
でも壁が居ないのでダメージは自分達に来る筈だし、後ろで遊んでいても大丈夫と言われたけど今回も回復役として参加する事にしよう。
今回はもう一人新しい方も一緒に来てくれるみたいだから一層チャットが騒がしくなるんだろうな。五人であのカオスぶりだったのに、今度は六人のフルパーティだ。あれ以上のカオスなんて想像出来ないんだけど…一体どうなるんだろう…。
楽しみだけどちょっと不安に思いながらエーテルの補給をしてフィールドに戻る。今度は私が一番遅かったらしく、他の皆は既にダンジョン前に集まっているようだった。
「それじゃあアーサー君、耀君呼んであげて」
「あー、リーダー俺だったか。ちょっと待っとけ」
アーサーさんがそう言って暫くすると、ぱっとシステムログが表示される。
その後直ぐにダンジョンが開くエフェクトが表示されて、耀さん、と言う方も直ぐ近くに居た事が分かった(ダンジョンの入り口は人が多いからパーティメンバー以外のキャラを表示させてなかったのだ)。
次々転送されていくメンバーに続いて最後に私がダンジョンの中に入ると、見慣れぬチャイナ服を着た方が居たので、それが耀さんだと分かった。
挨拶も程々に作戦会議が始められるけれど、やっぱり一回目と同じようなやり取りが繰り返されて作戦と呼べなさそうな作戦に決められる。
本当に大丈夫なのかなあ、と思いつつ私は回復役に回る事を告げて、後衛の人達の後ろを着いていく事にした。
結局本日二回目のダンジョンは、一回目と同じく大変カオスな事になりました。
範囲攻撃をする筈だったアルフレッドさんが弾切れで何故か銃で敵を殴ったりしてちょっとときめいたり(殴り魔じゃなくて…なんだろう、殴り銃?とにかく殴り職と同じ香りがした)、そのダメージも凄い数値だったりしてびっくりしたり。
イヴァンさんは相変わらず範囲魔法を連発していたけど、元々MPが高い所為か全然MPが枯渇する場面を見る事が出来なかったり。
逆にアーサーさんはMPの消費が激しい召喚を繰り返していたのでエーテル使い放題していたけど、あれだけ使っているのによく足りなくならないよなあ、と感心したり(後で聞いたらスロット数個エーテルが占めてると言っていた)。
私は範囲の回復魔法をしながらそんな三人の攻撃っぷりを見て呟く。廃人だなあ、と。
そして後衛職が頑張っている間、フランシスさんと耀さんは後ろでそのカオスっぷりを見て黄昏ていたのは、言うまでもない。
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[2009.12.20]
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