生徒会長さんと密会。


 結局ソファに移動するのは全力で拒否して、俺のデスクを支えに続きをする事になってしまった。
 薄暗くなってきている部屋を意識しなければこの場所が生徒会室だと分からないから、俺は必死になって別の事を考えていく。アルをどうやって呪うかとか、今日の晩御飯は何が良いか、とか。
 どうせ与えられる刺激で場所なんて気にならなくなる筈だから、なるべく騒がないように、手を口元に寄せる。
 熱の中心は溜まっていた分、触られると直ぐに硬くなって先端からほろりと液体が流れていた。

「ん、ぁ…」

 暗くてよく見えない視界は、アルが何処を触ろうとしているのかも分からなくて、不意に胸の辺りを突かれるとびくりと肩が震える。
 まるで目隠しされてるみたいだ。でも真っ暗じゃなくて、動きは少しだけ見える。僅かな光で反射するテキサスが、俺を抱こうとしている奴を誰か理解させる。
 アル、アルフレッド。そう名前を呼んだら動く手がぴくりと反応する。ああ、暗くて見え難いけどお前なんだよなあ。馬鹿、お前の手すげえあっつい。俺を火傷させる気かよ。
 ぎゅっと抱きしめてくる大きな子供に目を細めて俺もぎゅっと抱きしめ返す。体勢があまり良くなくて抱きしめにくかったけれど、手はかろうじて背中に届いたので彼がまだ羽織っていたジャケットを握りしめた。
 頭や額にキスが落とされて視界がぼやける。アルの口唇は手よりもあったかくて、キスが落とされ場所がじんわりと熱を帯びて俺の身体に染み渡っていく。
 そのキスが堪らなく愛おしいと感じ、俺も口付けをやり返す。ちゅ、と触れるだけのものを頬に落として、深いものを口唇に。

「…ぅ」
「ん、…ふ、ぅ…」
「…っぷ、ぁー…。…もー君って人は」
「ぅあ?」

 くちゅくちゅと水音を響かせて心地良いキスに浸っていると、アルが耐えきれなくなったのか、ぱっと唇を離す。
 突然無くなった心地良さに物足りなさを感じて俺は眉を顰めた。なんだよ、俺とのキスが嫌なのかよ。視線でそんな事を投げかけると、アルは首を振って否定する。
 じゃあなんだよ、と俺が聞くと、耳元で俺の口癖である「ばか」を呟いて耳朶を噛まれてキスされた。う、わあああ。
 間近で聞こえるリップ音に耳を塞ぎたくなる。ああもう、なんでそんな事するんだよ。俺はそんなエロい事教えた事無いぞ。何処で覚えたんだよ馬鹿。

「君の方がエロいってば」
「え、あ?」
「声に出てるんだぞ。君って世界一なんだからもっと手加減してくれよ!俺が追いつめられるじゃないか」

 そう言って耳をはぐはぐ食まれて背筋がぴん、となる。うわああ、それやめろ馬鹿ぁ、ぞわぞわするだろ!
 首を大きく振って引き剥がそうとアルの身体を押すけれどびくともしない。圧し掛かられて肺が潰れそうだ。こいつまた太ったんじゃないのか…?
 うう、と震えながらアルの言葉を頭の中で繰り返す。そりゃあ、俺が世界一キスが上手い国なのは知っての通りだけど、アルだって世界五位の実力なのでどちらかと言えば上手い方だ。
 そのテクニックを何処で覚えたのかは知らないけれど、こんな、耳に舌を入れるような事まで俺はした事無いぞ。あ、馬鹿、言ってる傍から舌入れてくるなよ!うぁああ、あ。
 耳の中がごわごわと音を立てて侵食されていく。足ががたがたと震えて今にも崩れてしまいそうだった。普段こんな変な事してこないから、慣れない刺激についていけない。
 腰が重い。仰け反りたい衝動に駆られるけど、アルがぴったりと密着してるのでそれも出来ない。胸の突起を抓られる。いた、い、けど、腹の辺りからぞくぞくしてくる。うあ、あ、やばい、こんな状態で触られたら、ぁあ。

「ぁ、や、…だ」
「出る?」
「っひ、あ、―…っ!」

 びくりと身体が大きく震える。根元から搾られるように握られて、俺はあっという間に果てた。
 溜まってた白濁はアルの手の中で音を立てて吐き出された。きっと床とデスクを汚さないように受け止めてくれたんだろう。
 達した余韻でぼんやりとする思考の中、俺は長い深呼吸を数回繰り返す。そうすれば、頭の中がクリアになって気分がすっきりするからだ。
 力が抜けてデスクに投げ出した手はぴくぴくと小さく動いていて、それを止める為にぎゅっと手を握りしめる。けど、重なるようにアルの手が添えられて、またふにゃりと力が抜けた。

「…な、あ?続き、するのか?」
「駄目かい?アーサーのここに、いれたい」
「ふ、やぁ…!ばか、ぁ今、さわる、な…!」

 幾分かマシになった思考で聞くと、アルは膨らみの奥へと指を忍ばせる。俺の精液で濡れている所為か、粘っこい水音が響いて死にたくなった。
 つ、と指の先だけ挿れられて直ぐに引き抜かれる。そして指に纏った液体を塗りこませるように擦られると、出したばっかりの熱がぼっと身体の奥で火を灯した。ああ、もう、快楽に正直だなあ、俺の身体。
 エロい事に対して敏感になったのはいつからだろう。もうセックスするのを想像するだけでイっちゃうんじゃないか?あーいや、まだそこまでは出来そうにないな。そこまで行けばもう末期だし。
 でもアルに触られるのを想像したら…、……今、腰が重くなったのは気の所為だよな、うん。俺はまだまだ末期になんかならねえぞ。
 うう、と唸って後ろを振り向く。テキサスの奥できらきら光る深い青はいつ見ても綺麗だ。いつもは薄い水色がかった色をしているのに、こうした情事の時だけ色が濃くなる事を知っているのは、今の所俺だけ。アル自身もそれは気付いてない筈だ。
 子供のようにちゅっと軽いキスをしてくる彼に薄く笑って、こくんと頷く。でも、一つだけ聞いておかなきゃいけない事があった。

「…ん、お前、コンドーム持って、んのか…?」
「この状態で持ってると思うかい?」
「だろうと、思った。…今度はちゃんと用意しとけ、ぅ…。と、りあえず、そこの、上から二番目の、引き出し…っ」

 震える声でそう告げて、いつの間にか中に入っているアルの指の感覚に耐える。まだ入っているのは一本だけみたいだが、視覚が遮られている分、いつもと違う感覚が身体を駆け巡って正直気持ち良かった。
 カタン、と横で引き出しが開けられて、がさごそと物を探る音が鳴る。目的の物を見つけたのか、アルが口笛をぴゅっと吹くと、同時に呆れた溜め息が吐き出された。

「こんなにいっぱい常備してるなんて、君、そんなにここでセックスしたかったのかい?」
「ちげえよばかぁ!それ、は!生徒に、配る為の、奴で…、おれのじゃ、ねえ!」
「ふーん?んじゃまあ有難く使わせてもらうんだぞー」

 びりびりと包装が破かれる音がして、無造作にゴミがデスクの上に置かれる。馬鹿、後でちゃんと持ち帰れよ。万一にでもここのゴミ箱に捨てたら追加で呪ってやるからな。
 ぼそりとアルに呟いて(こら、そこで拒否すんな)、俺は持ち上げた頭をこてりとデスクに下ろす。また顔が熱くなってきてたのでデスクに頬をくっつけると、そこの部分からひんやりとした温度が伝わってきて気持ち良かった。
 入っている指はぐにぐにと内壁を広げていってどんどん中に入り込んでいく。ぐしゅ、と一際大きな音が立って、それが自分の中で鳴ったのかと思うと首を振りたくなってしまう。あー、やらし、えっろい。
 頭の中まで奴に犯されそう。ああ、やべえ、今凄い気持ち良いかも。全部アルに満たされてく感じが堪らない。好きだ、大好きだ、アル、アルフレッド。でも声に出しては言わない。心の中で何回も言ってやる。だって声に出すと恥ずかしいだろ、馬鹿。

「ひゃ、ぁあああ、あ…、ん、ぁっ」
「アーサー、アーサー。好きだよ、大好き」
「ん、んんぅ」

 お前はいっぱい言ってくれるよな、声に出して、沢山俺の事を愛してくれる。それだけで俺は満たされる。
 それなのに、身体も満たしてくれるなんて、幸せすぎて死にそう。これは夢か?誰か俺の頬を抓って起こしてくれるか?あ、いや、でも本当に夢だったら別の意味で死にたくなるから止めておこう。
 後ろから挿れられた熱は、俺と同じように熱くて心地良かった。こくりと喉を鳴らして溢れる唾液を飲み込んでも、中から溢れ出てぼたぼたとデスクに落ちていく。
 ばさりと音を立てて俺の手の近くに何かが置かれる。瞑っていた目をこじ開けて確認すると、アルがいつも羽織っていたジャケットだった。
 指先でそれをかりかりと少しずつ手繰り寄せてすん、と鼻を寄せると、アルが毎日使ってるシャンプーと汗の匂いがしてふにゃりと顔が緩む。

「あ、やらしー」
「ふあ?…ばぁかー、お前だって、っふ、あ、やらし」
「ん、君には負けるんだぞー」
「うるせー、ばか」
「お互い様なんだぞ、くたばれー」

 二人でけらけらと笑い合って、むちゅっと唇に押し付けるキス。目を閉じる事はせずに、互いの瞳を見つめ合ってしたら恥ずかしかった。
 結局先に目を瞑ったのは俺だけど、ソフトキスじゃ我慢出来なくなって唇を割り開いて舌を差し出してきたのはアルの方だった。
 喉を鳴らして与えられる液体を飲み込んでいく。ああ、満たされてく。心地良い温かさに震える。思わず流れた涙は指の腹で拭われた。
 口唇を離すと、火照った身体をするすると撫でられた。あ、馬鹿、焦らすなよ。そんなゆっくり触んな馬鹿。馬鹿馬鹿、ばかぁ。
 語尾が薄れて嬌声に変わり果てる罵声に、アルは俺の頭を撫でてにぃ、と口元を吊り上げた。あ、やらしい。


「…死にたい、死にたい死にたい死にたい」
「そろそろ機嫌直してくれよアーサー、もうやっちゃったんだしさー」
「うるせえ馬鹿!なんでお前は平然としてるんだよ!普通あんな所でするか!?」
「だから我慢出来なかったんだって!君だってノリノリだったくせに!」
「うぐ…っ、ううう…俺の馬鹿、死にたい…死にたい死にたい」
「oh…これが菊が言ってた無限ループって奴かい…ジーザス、勘弁してくれよ」

 それはこっちの台詞だ馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿、アルの馬鹿。ばぁか!


 

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結局オチが見つからない。これはひどい。だがツンデレのアーサーさんは可愛い。

[2010.01.24]