reject Manhattan!


 なんとか「突っこみたい」と連呼するアーサーを落ち着かせて数十秒。
 未だに達せていない俺の息子さんが外気に触れて寒そうに震えていた。でも実際は熱かった。
 むにむにと口を動かしてアーサーは特徴的な眉毛を八の字にする。俺に突っ込みたかったのに拒否されたからしょんぼりしてるんだろう。
 そんな寂しそうな顔をしても駄目なものは駄目なんだぞ!可愛い顔をしているのに言動が変態以外のなにものでもないって…、頭を抱えたくなるじゃないか!
 そりゃあ、どっちが挿れるかなんて相談すらしていなかったけれどさ、暗黙の了解って奴で俺が挿れるものだと思ってたよ!最初に襲おうとしたの俺だし!
 アーサーがまだ無理だって言ったから心と身体の準備だとかがあるかと思ってたのに俺の思い違いだったって事かい!?それとも酔っぱらって受け入れるより突っ込みたくなったのか君は!
 Nooo、と頭を掻き毟って叫び出したくなるけど、今は真夜中。ご近所さんに迷惑を掛ける訳にはいかない。
 その間にもアーサーは何かを呟いていたけれど、その呟きは小さくて俺の耳には全然届かなかった。
 って、言うか!寸止めされた俺の息子さんがそろそろ限界なんですけど!止めたの俺だけどさ、早くしないと爆発しそうです!色んな意味で!
 こうなったらトイレにでも急行して処理しちゃおうかな、アーサーは酔っぱらってるし、ちょっと放置したら勝手に寝てくれそうだし。
 うん、そうしよう、と仕方なくまた馬乗りになっていたアーサーを退けようと、彼の手を掴もうとした瞬間、その手がふっと俺の肩に乗せられる。

「アーサー?」
「…ぃい、もうてきとーに…いれる」
「…は?え、ちょ」

 今なんか凄い言葉が聞こえた気がするんですけど。
 そんな俺の思いはがつり、と歯が当たる位に合わせられたアーサーの唇によって四散した。
 キスの上手い国だけあって最初のがっつき具合は酷かったけど、その後の追撃はそれはもう凄まじいものだった。
 もうキスだけでイかされるんじゃないってくらい。なにあれ…俺もキスはまあまあ上手いと自分でも思ってたけど、世界一の腕前ってあんなに凄いのかい?エロすぎにも程があるよ!
 少し前まで口淫されてた所為か味は良いものじゃなかったけど、それも直ぐに消えてなくなる。たっぷりと唾液が舌を渡って寄越されてこくり、と喉を通る。
 どれだけ長くしていたのかは分からなかったけれど、キスが終わった後は二人揃って肩で息をしていた。顔が熱い。
 頭に酸素が来なくて少しばかりぼうっとしていた俺を余所に、アーサーは自分の指をぱくりと食む。
 ちろちろと指の間から見える舌の赤さが目に付いたけど、息を整える方を優先していたので俺は黙ってアーサーのする事を見ていた。
 あんなに沢山寄越されたと言うのに、咥えた指からはしっとりと唾液が伝って下に落ちていた。どれだけふやけさせれば気が済むんだこの人は。
 しかもまた目を細めてやらしい顔してるし。舐めるの好きなのかな?今度キャンディとかあげてみよう。どんな顔するかな?

「っぷぁ…ぅ…は、…ぁるー」
「うわ…」
「んゅ…んんぅ」

 唾液でべったべたになった指はするすると身体を這って下りていく。エプロンの紐に引っかかって煩わしそうにアーサーは顔を歪めたけど、直ぐにふにゃりと目を細めた。
 向かい合う格好で座っているのでアーサーが何をしようとしているのかはっきりと見て取れる。
 決して柔らかくはないけどすべすべしてそうな双方の膨らみの奥に指を添えて、中指を折り曲げる。あ、と小さく声を上げたアーサーはそのままアヌスへと指を突き入れた。
 滑っている指は動かしやすいのか、直ぐに粘着質のある水音を鳴らして中指が出たり入ったりを繰り返す。
 人前で、しかも自分から指を入れるなんて、素面のアーサーからは考えられない事が、今目の前で起こってる。はぁ、と熱い吐息が漏れたのはアーサーだったのか、それとも俺なのか、分からなかった。
 ただただその行為に目を奪われて、心臓が五月蠅いほどに音を立てている。熱い、すっごい身体が熱い。
 アーサー、と目を細めて名前を呼んだら、彼は嬉しそうに俺の名前を呼んで、唇を重ねてきた。
 入り込んでくる舌を甘噛みして俺からも啄ばむようにキスをする。上からも下からもくちゅくちゅと音が鳴ってて、凄いやらしい。うわー、誰かに聞かれたら恥ずかしくて死にそうなんだぞ。特にアーサーが。
 たっぷり数十秒続いたキスが終わっても、アーサーは俺の頬や口の端に小さくちゅっとしてくる。その仕草が可愛くてよしよしと頭を撫でてあげたら、やっぱりふにゃっと微笑んだ。

「アル、ある…ぅ」
「っ、ん?」

 擦り寄ってくるのは良いけど、エプロン越しに性器が擦れ合ってるのは頂けない。気持ちいいのはいいんだけど、先走りで濡れている布が邪魔だった。直接擦り合わせたらもっと気持ちいいと思うのに。
 なあに、と首を傾げて上目遣いのマイダーリンに話しかけてあげると、物欲しそうにアヌスに入ってる指が動く。いつの間に三本入れたんだ君。
 音を立てて引き抜かれた指はランプの明かりによっててらてらと光っていたけど、俺が気になったのはそこじゃない。
 確か彼は女性とのセックス経験はあるけど、男の方は皆無だと言っていた筈だ。突っ込むのはするけど、突っ込まれる事はした事がない。
 その筈なのに幾ら酔っぱらって緩くなったとは言え、行き成り指を三本突き入れて痛みを感じないとはどういう事か。どう見ても彼は痛みじゃなく快感を得ている。これはおかしい。
 では何故か?それを考えようとした所で、アーサーが身体を起こしたのでちょっとびっくりした。

「なぁ…、いれていいか?」
「もう挿れる寸前って格好してるのに何言ってるんだい君は。って…ゴム付けなくて良いの?俺そろそろ出そうなんだけ―…っ!」

 言いかけて、声が塞がれる。
 また深いキスだ。本当にキスが好きだなこの人は。…じゃなくて!アーサーの為に言ってあげたというのに話すら聞かない気かこの人は!
 ちょっと待ってよ、と早急に事を進めようとしている彼を制止しようと腕を掴んだ。けど、それは数秒遅かった。

「そんなの、持ってるわけ無いだろばかぁー…っ!」
「っちょ…ま、あ、…ぁあ…―っ!」
「ふぁ…んっ」

 素晴らしい笑顔で微笑まれて、ずぷり、と中に突き入れられた。
 口の中とは違う、狭くて締めつけられる感覚。入れた瞬間にアーサーの弱い所に当たっちゃったみたいで、中がぎゅっとなる。それと同時にじんわりと粘液が流れて、限界だった俺は思わずアーサーの中に精を吐き出した。
 アーサーの中に白濁が流れていく、その動きに合わせてアーサーの身体も小刻みに震えていた。
 びくり、と腰が震えて射精後の余韻に浸る。荒い吐息と共に意味を成さない小さな声が出て、やっぱり自分でするのとは全然違うんだな、って思った。
 まどろんだ思考でそんな事を考えて、アーサーを見る。彼は俺がイった事に満足したのか、中でぴくぴく震えるペニスを撫でるようにお腹を押さえて笑っていた。

「あ、る…かわいいぃ…」

 うっとりとした表情でそんな言葉を言い放った彼はどうやら達していなかったらしい。…oh、ちょっと時間を巻き戻したい気分なんだけど。
 この人俺がイった時の顔絶対ガン見してると思うよ!こんな表情してるんだから絶対だよ!ジーザス!変な顔見られた!寄りにも寄ってこの人に!
 本日二度目のオー・マイ・ゴッドを呟く。俺の気持ちを全く知らないアーサーはまだにこにこ笑って俺が可愛いと囁いていた。
 …OK、達した事でちょっと冷静になれた気がするよ。
 まずはこの人をどうにかして引っぺがさないといけない。けどそれをするには彼を眠らせなければならない。
 彼を眠らせた後は身体を洗ったりシーツを変えたりの処理をして、彼を慰める言い訳を考えて…えーっとそれから…。

「アルー?」
「ああもう、ちょっと黙っててくれよ。じゃないともう一回中に出すよ」
「…ん…いいけど」
「…。とりあえず一分黙るんだぞ」
「うん…」

 ぼうっとした深い緑の瞳に見つめられて、とくり、と冷めた筈の場所に熱が宿る。
 けどそれは見なかった事にして(まだアーサーの中だし見えないけどね)、今は事後処理の事を考えないと。
 えっと、アーサーの服はどうせこの布切れだけだと思うから俺の服を着せて、シーツ変えてる間はソファに寝かせて…後は洗濯機ぐるぐる回せばいいかな?
 ううむ、初めてだから何をすればいいのか正直分かんないんだぞ。とりあえずは身体を綺麗にしないと。アーサーの中に出しちゃったのも掻き出してあげないといけないし。
 すっかり目が覚めてしまって、二度寝するには時間が掛かるだろうし、それ位の仕事は軽くこなせるだろう。
 とにかく今はアーサーをどうやって寝かせるか…。

「…ん、っは、ぁ…。あ、ぅ」

 ……。うん、俺は黙ってろと言っただけだからそれ以外の事をしていても別に構わないんだけども。
 どうして君は俺をドン引きさせるような事を何度もやってくれるんだい?そしてどうしてこんなにドン引きするのに彼の事が嫌いになれないんだい、俺。
 俺は彼の事を変態だと言うけど、彼の事を嫌いになれない俺もまた変態なんだろうか。ああ、また頭が痛くなってきたんだぞ…。
 ぐしゅぐしゅと布越しで自身の性器を扱うアーサーに段々腹の虫が治まらなくなってきて、俺の中でぷちん、と何かが切れる。
 どさりと大きな音を立てて身体を反転させ、座り合っていた体制を俺が押し倒す形にさせる。
 突然の事でびっくりしていたアーサーは首を傾げていたけれど、俺は構わず濡れそぼった黒いエプロンを彼の腰から取り去った。
 そしてほとんど全裸の状態の彼の両腿に手を添えて、思いっきり入ったままだった中を突き上げた。

「ある…?っや…!?」
「もう知らない、俺は悪くないんだぞ…悪いのは全部君なんだぞ!」
「あ、やぁああぁ!ある、ひゃぁあ…はげし、ぃい!」
「俺は悪くないんだぞー!!」


 次の日何故か平手打ちをお見舞いされた。ジーザス!俺は悪くないのに!


 

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なんか変な終わり方した…。ウチのアル君は毎回引っ叩かれてる気がする…ヘタレ…?それとも不憫…?
えろす難しいけどやっぱり楽しいです。へへへ。

[2009.12.11]