Attention!
アーサーさんがどうしようもないへんたい。
reject Manhattan!
寝起きの時は誰でも鈍感で状況把握をするのに僅かばかり時間を要すると言うけれど、毎朝の事を考えると本当だよと心底呟きたくなる。
重い身体を起こして、背伸びと欠伸をして、まだぬくもりが残ってるベッドから出て、それで漸く目覚めたと言える。
てきぱきと動く事は出来ないけれど、覚醒してから時間は立っているから思考は動くはずだ。
そこまで来れば何が起こっているかも瞬時に理解出来るし、ある程度の対処方法は浮かぶだろう。
でもそこまで到達出来なかったら?
…きっと、寝起きの瞬間に何かが起こっていたら、呆然とするしかないんだろうね。
こんな風に。
「…あ、さー、…なにしてるんだい」
「ふぁ…?」
良い気分で夢心地を楽しんでいたと言うのに(トニーと宇宙旅行したり悪い奴を倒したりね!)、なんだか下半身が重いと夢の中でも思って起きて見れば、一体なんなんだ、この状況。
どうして半裸の元兄と呼べる存在の人が俺の部屋に居るんだい。しかもなんか見てはいけない物を見てる気がするし。
頭を抱えたくなるほどドン引きしたい今の状況に、アーサーはふにゃり、と顔を綻ばせてその表情には不釣り合いな「それ」を根元からゆっくり掴んだ。
「っ、」
どくん、と心臓の音が頭の中で鳴って徐々に鈍かった思考が働いてくる。けど、何故かアーサーから視線を放す事が出来なかった。
嘘だろジーザス、もしかしてもしかしなくとも興奮してるのか、俺は?少しだけ立ち上がった自分の息子を見る限りそうなのか、そうなんだね。
まだ思春期は通り過ぎた訳じゃないから、こんなやらしいシーンを見て反応するのは当たり前だ、うん、そうそう。
今問題なのは半勃ちしてる自分の性器ではなくそれを扱ってるアーサーのほうだ。寝込みを襲うなんて趣味、俺は知らない(エロいのは嫌になる程知ってるけど)。
しかも半裸で、首にリボンタイを付けて手首に白のカフス、あとは腰に短い黒のエプロンを付けてるだけ。何処かで見た事あるような服装だったけれど、思い出しそうになった所でべろり、と舌を出したアーサーに弱い所を舐められた。
ひ、と喉が引き攣ったけど、きっと声は出てない筈だ。その代わり肩が大袈裟に揺れたからアーサーは気付いたと思う。その証拠に凄く良い笑顔をしてるし。
普段ならそんな顔見せないと言うのに、どうしてだろうと思うのは愚問だ。足に乗っかられて動きにくい身体をなんとか起こしてアーサーの顔を上げさせると、案の定、その頬はほんのりと赤く染まっていた。
「…君、酔っ払ってこんな事するなんてどれだけエロいんだい?」
「ふ、あー。えろいと駄目なのかよ…」
「いや別に駄目って訳じゃないけど…夜這いはどうかと思うよ」
「じゃあいいじゃねえか」
なにがどうなって良いのか俺には理解出来ないよアーサー。絶対俺が後半言った言葉を聞いちゃいないね、君は。
もういっそ殴って気絶させてやろうかと思ってしまうが、仮にも恋人とか言う関係なので殴ったあとに泣かれたりしたら困る。別れるとか言われたら余計に。
って言うか!その、一応恋人なんだからセックスの一つや二つしたいと思ってた俺の思いが今見事に砕け散ろうとしてるんですけど!まだ無理だって言った赤面の君は一体何処に行ったんだい!
これがアーサーとの初めてとかそんな冗談いらないよ!照れ屋な君に良い雰囲気でも作ってあげたいなーとか思ってたのに!なにこれ!ムードの欠片も無いよ!片方酔っ払ってるし!
額に手を添えてオー・マイ・ゴッド、と呟いて、まだ俺の足を自由にしてくれないアーサーは俺の百面相を見て笑っていた。完璧に他人事だと思ってるよこの人。
「もう…君が良いなら俺はとやかく言わないけどさあ、いい加減退いてくれないかい?これじゃあ動けないよ」
「やー、動かなくていいだろ…俺が全部やるからおまえは大人しくしとけ…」
「なら…お好きにどーぞ」
俺も触りたいんだけどなあと口に出しても、きっと酔っ払ってる彼には届かないんだろう。だから吐息を吐いて仕方なく彼の言う通りにする。
ふにゃふにゃと童顔だった顔を更に幼くさせている頬をすりすりと撫でてあげたら、アーサーは嬉しそうに目を細めた。
まだ朝には程遠い時間だったけれど、開けていたカーテンの隙間から入ってくる月の光が俺とアーサーのシルエットを作る。
それだけの明かりじゃ心許なかったのでベッドの横に置いてあるランプのスイッチを押すと、傘の中の電球がぼんやりと室内を照らし出した。
ついでに外してあったテキサスも手繰り寄せていつもの位置に掛けると、薄暗くて所々しか分からなかったアーサーの身体が良く見えた。
ぼんやりとした光でも、その肌の白さがやけに目立つ。黒のエプロンをしてるから更に、だ。と言うかここからじゃ尻丸出しなんだけど。
膝を折り曲げて四つん這いの姿勢でアーサーは俺の太腿や脇腹に軽いキスをしてぺろり、と唇を舐める。その仕草が凄くやらしかった。あああ、なんで酔っ払ってるんだよ君は!素面でそんな表情して欲しかったと思うよ!まあ見れて良かったけど!
「んふ、かわいいな、アルは」
「なに言ってるんだい…君の方が、っ…あ」
「…ほら、可愛いじゃねえか」
小さくてぽってりした舌が動き回り、唾液が糸のように細くなってシーツに落ちるけど、アーサーは気にせず太腿の内側をすすす、と舐めた。
変な所を舐められて足が震える。くすぐったくて足を閉じようとしても、丁度中心にいる彼が邪魔でうまく閉じる事が出来なかった。
ズボンも下着も寝る前は付けてたはずなのに、今は両方俺の足には引っ掛かって無い。きっとベッドの下に落ちてる事だろう。脱がされていたのに気付かなかったのは余程深い眠りについていた所為か。ああ、出来る事なら目覚めたくなかったかも。
いや目覚めてなかったらもっと酷い事になってたのかな?どっちにしろ今の状況が悪夢に近いものに変わりはない。酔いが覚めたらアーサーはきっと後悔するだろうし、その後の落ち込み具合は半端ないから想像したくない。
慰める言葉も考えないといけないのに、酔っぱらってる状態のアーサーは全然その余裕をくれなかった。むしろ追いつめられてる気がする。
唾液で光る指先は相変わらず俺のペニスを触っていたけれど、決定的な刺激が無くて正直辛い。優しくしてくれるのは有難いけど、ゆっくり扱うだけだともどかしかった。
「ぅ…アーサー、もっと触ってよ」
「ん、…欲しいか?」
「…そりゃ、ね」
「じゃあ触ってあげないとなあー、アルの頼みごとなんだし…」
するするとお腹を撫でられて少しだけ息が詰まったけど、なんとか声に出す事は出来た。
きょとりと首を傾げていたアーサーはにんまりと微笑んで触れていただけの掌に力を入れる。それだけでも少しだけ反応する自分が嫌になりそうだった。…俺は早漏じゃないんだぞ…散々焦らしたアーサーが悪いんだ。
扱う手が片手から両手に変わり、片手だけじゃ収まらなかった部分が全てアーサーの手の中に収まる。外気に触れていた場所が暖かくなって、ちょっとほっとした。
今度はゆっくりと、でも確実に攻め立てるように扱かれて、むずむずしていた気持ちが段々快感の方へ切り替わっていく。
自分で扱う事はあったけど、他人に触られるのは初めてだったので羞恥を感じると思ったのに、寝起きの状態でなんか既に触られてたので自分に対して恥ずかしいとは思わなかった。アーサーに対しては思ったけど。
裏筋をすっと親指の腹で撫でてゆるりと手が上下に動く。その動きに合わせてはっと息を吐いたら、にんまりとまた微笑まれた。
その笑みが嬉しそうなんだけど何かを含んでいるような気がして、一瞬嫌な予感がした。…した、だけなら良かったのに。
「ぅあ…っ!?」
「ん、…んぅー…っふ」
事もあろうに、この人は咥えてきたのだ。正直言うと童貞のこの俺のペニスを。
感じた事のない粘膜の刺激があまりにも強過ぎて声が裏返る。こんなに高い声が出るなんて思ってなくて、咄嗟に手の甲で口を押さえたけど声が漏れて意味が無かった。
ちょっと、酔っぱらっているとは言え自分にも同じのがついてるそれを戸惑いもなく咥えるってどう言う事だい!?またドン引きしたくなっちゃったじゃないか!
口いっぱいに頬張られて足ががたがたと震えるけれど、なんとかアーサーの髪の毛を引っ張って制止するように求める。
ペニスを咥えたまま上目遣いで見上げたアーサーは切羽詰まっているであろう俺の顔を見てまたくふふ、と笑う。歯が当たってまた俺の息子が成長しました。俺は早漏じゃない、まだ出す訳にはいかないんだぞ…っ!
止めてほしいのに逆にどんどん行為を進めていくアーサーは、たっぷり含んだ唾液を舌で転がしていく。頭を上下されて、じゅ、と水音が聴覚を刺激した。あ、あああ。
想像するだけでもエロいのに目の前でそんな行為をされたら初めての俺は直ぐに果ててしまうだろう。実際そろそろ出したい気分。舌の使い方が上手過ぎて快感しかやってこない。なんだ、これ。なんだこれ。
「あ、ぁあ…ぅ…ひ、ぁあ」
「っふ…、ん、…ありゅ、きもひ、い?」
「ん、ぁあ…ッ!や、咥えたまま、喋らないでくれよ…っ!」
「…んぅ」
じゅぷじゅぷ、普段ならあり得ない所からそんな音が発せられる。水分でふやけてしまうんじゃないかと思う位に沢山の唾液がぼたぼたとシーツに落ちて薄い染みを作っていた。
もう口を塞ぐなんて出来ない。気持ち良過ぎておかしくなりそうだ!アーサーが自主的にこんな事をしてくるなんて俺の大陸とヨーロッパの大陸が繋がっちゃう位にあり得ない事だと思ってたのに(あ、でもそうなると移動が楽でいいよね)!
身体を起こすのも精一杯で、上半身を支えている両手ががくがくしていた。足の指先は可愛らしく丸まってしまっている。Nooo、本当はこんな姿をアーサーにさせたかったのに!俺なんかがしても嬉しくないよ!
はぁ、と顔に溜まる熱を出そうと大きく息を吐いたら、咥えきれなかった根元の部分までずるり、と口の中に入れられた。また喉が引き攣って声が裏返る。今度はアーサーにも分かる位に大きな声が出て自分でも驚いた。
次第に早くなる舌の動きに変になりそうだった。先走りが零れる先端を突かれたと思えば根元から裏筋をしつこく舐められる。左手はその下の二つの膨らみを転がしていて、右手は更にその奥の―…。
…って、ちょっと待て。あれ、その奥ってもしかしてもしかしなくとも。
「…あー、さー!ちょ、とストップ!ストップ!」
「ふにゃぁあ…?ぅ、っん…」
「っあ…、待ってってば!どこ、触ってるんだい!?そこは君の方を触るべきだとおもうんだけ…ど!」
「ぁう…?…、やだ…おれ…アルにつっこみたい…」
…ああジーザス、これなんて悪夢だい。
こんなムードも無い場所で俺の初めてが奪われそうです。しかも先に後ろの方って、なにそれ。誰か嘘だと言っておくれよ!
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[2009.12.07]