pure white

 

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なんだか良く分からない像(羽が生えてて…竜っぽい?)がそこにはあって、これまたよく分からない単語をリーマスさんが呟く(ごきぶり…豆?なんか嫌な単語だなぁ)。
するとあら不思議。像がぐらぐらと揺れて道が出来ましたとさ。
わあ、なにこれ。これも魔法かな。パスワード付きとか高級マンション並みのセキュリティって訳なのかな。
でもパスワードも生徒さんにばれてたらあんまり意味無いような…気が…するのだけど。まあいいか。

で、結局この階段を上った先には誰が待っているのだろう?

「あの、結局どこに向かってるんですか?」
「この上」
「…それは分かりますけど」

急に緊張してきて直ぐ近くにあったシリウスさんの服を引っ張った。
うー、と唸ると一番前を歩いていたリーマスさんが振り向いて「大丈夫だよ」とにこりと笑った。
本当に大丈夫なのだろうか…リーマスさんの笑顔はあんまり信用できな…いえ、きっと大丈夫なんでしょうね!うん!

「先生ー?居ますかー」
「ダンブルドア校長ー」

階段を上っている間にシリウスさんとリーマスさんが上の部屋に居るであろう人に呼びかけた。
上からは返事なのかは分からないがさごそ、と言う雑音だけが聞こえた。…居るのかな?
と言うよりも今の発言でこの上に居るのはこの学校の校長先生だと言う事が分かった。
え、いきなり私校長先生の前に差し出されるんですか!?自分の学校の校長先生だって面と向かって対話したことすらないのに!
学校の一番偉い人(?)にこんなに簡単に会ってしまって良いんだろうか。内心凄くどきどきしてきました。
何話せばいいんだろう…!それよりも部外者だから排除してしまえ!とか言われて魔法ぶっ放されたらどうしよう…。
私の人生ここで終わっちゃうのかなぁ…いやもう終わっちゃってたか。

そんな事を考えつつも立ち止まることは許されないようで(後ろにピーターさんが居るし)、私は階段を上りきってしまった。
部屋の感想はと言うと…なんて言うか、ごちゃごちゃしてる。けれども何処か整えられた感じの古い部屋、だった。
机と言う机に本や紙が積み上げられており、砂時計や何かの金属の塊、どうやって使うのかも分からない見知らぬオブジェがあちこちに並んでいた。
…片付けたいな。でもこれはこれでいかにも魔法使いの部屋って感じがするから良いか…。
呑気にそう思っていると、リーマスさんが私達より一歩前に出て部屋を見渡した。

「校長先生、居らっしゃるなら出てきてください」
「それで出てくるんですか…」
「ほほっほ、おはようリーマス」
「!?」

何処からともなく籠った老人の声が聞こえたかと思うと、ぬっと一番奥にあった机の上から白い髭が飛び出してきた。
いきなりの事だったので私はびくり、と思いきり肩を揺らす。びっくりした…!あんな所から出てくるとは思わなかった!と言うよりあんな所に居たんだ!
思わぬ所からの登場に心臓が口から飛び出るんじゃないか、と言う位にどきどきした。びっくりし過ぎて声も出ない。
結局数秒後に漏れたのはおひゃあ、と言う意味不明な単語だった。誰にも聞かれてないだけまだマシか。
校長、と呼ばれた白髭のお爺さんは半月型の眼鏡の奥にある綺麗な色の瞳を瞬かせて来訪者を見やる。
じっと目が横に動いて、私の所でぴたりと止まると、もう一度目を瞬かせてほう、と呟いた。

「君はさっきの子じゃな」
「ふ、え?」
「先生知ってるんですか?大広間の扉の真ん前でしゃがみ込んでたんで連れて来たんですけど」

シリウスさんが説明している間にも校長先生さんは私を見つめたままふむ、と呟いていた。
うう、シリウスさん達より歳が上の所為かこっちの方が緊張する…。あんまり凝視しないで欲しいのに、どうしてこうじっと見られる確率が高いんだろう(日本人って珍しいのかなあ)。
視線を何処へ向ければ良いのか分からなくてきょろきょろと忙しなく目だけ動かしていたら、校長先生さんが登場した時と同じようにほっほと笑って私から目を離してくれた。
その事にほっとして動かしていた視線をゆっくりと校長先生さんの方へ向ける。目は細くなっていたけれど、その奥の綺麗な色は少し離れたこの距離でも確認する事が出来た。

「なるほどなるほど。話は分かった」
「それで…彼女はどうするんですか?」
「ふむ、すまんがここからは彼女と二人きりで話がしたいのう。君達も授業があろうて」
「あっ…」

そう言えば、と言わんばかりに後ろに居たピーターさんが声を上げる。続いてリーマスさんが苦笑。
シリウスさんは嫌そうに顔を歪めていたけど、校長先生さんの前だからか直ぐに元の表情に戻していた。
やっぱり学校だから授業があるんだ。そりゃあ授業無かったら学校の意味無いし当たり前か。
でも授業って何するんだろう。魔法の授業?それとも普通に五教科を中心に…ってそれだと面白味無いなあ。
どさどさと蛍光色の液体とか何かの内臓とか入れたりする勉強とか?…うわあ、実際にやってるとか想像したくない。
やっぱり無難に魔法の杖で魔法使ってたらいいな。うん、それが一番良い。こんな格好良い人達がえげつない物を作ってる所とか見たくない。
うんうん、と一人で頷いて(シリウスさんが首を傾げていたけど無視だ)納得し、些細な疑問に自答する。

「…仕方ねえ、行くか」
「そんな事言っちゃ駄目だよシリウス。じゃあ、失礼しました」

渋々と言った表情で三人はくるりと踵を返して校長室から出ていく。
去り際にリーマスさんが「またね」と言ってくれたけれど、どう答えて良いのか分からず私はむにゃむにゃと口の中で言葉を転がした。
結局、返事は出来なかった。

 

 

奇抜の向こうのセカイ