第二印象は「眉毛!眉毛が大変な事になってる!」
ある日ポストの中を見たら、見知らぬエアメールが入っていた。
綺麗な筆記体で書かれた宛先は私宛で、裏に書いてある差出人の名前を目で追って、ちょっとばかし目を見開いた。
「…なんでアーサーが私の住所知ってるの?」
多少の疑問は残っているけれど、彼が送ってきたもので間違いなさそうなその手紙を捨てる訳にもいかず、ペーパーナイフで中身を切らないように綺麗に端を切っていく。
首を傾げながら数枚入っていたシンプルな便箋を広げてみると、そこには宛先と同じように綺麗な筆記体が間隔を開けて並んでいた。
えーと、なになに。この度は急なお手紙失礼し…ってこれ本当にあのアーサーが書いてるのかしら。なんか余所余所しい文章だなあ。
いつもの記念日のように「これはお前の為じゃなくて俺の為なんだからな!」みたいな感じのツンデレテンプレートの方が彼らしいと思うんだけど…手紙では敬語なんだ、意外。
つらつらと書かれている文章をゆっくりと目で追っていって、他の便箋にも目を通す。
「…ふむ、なるほど」
そして彼が何故突然手紙を出したのかを、納得。でもどうして私宛なのかは、理解不能。
手紙の中身は普通に知人に宛てて差し出された内容で、どう過ごしているのかとか、そんな日常話から始まっていた。
重要なのはその後で、今アーサーの家で薔薇が綺麗に咲いているらしく、良かったら見に来ないかと言うお誘いのメッセージが書かれていた事だ。
ガーデニングなんか一切しない私はまず最初にアーサーって庭いじりしてるんだ、と思い、今は秋なのに薔薇が咲いているんだ、と妙な所に感心した。普通は五月とかその辺だと思ってたから、何となく。
花を見るのは嫌いと言う訳では無いから、誘ってもらえるのは有難い。けれど、アーサーの家と言うのが不穏な響きだ。
彼はイギリスと言う国そのものなんだから、彼の住んでいる家ももちろんイギリス本国にあるのだろう。
で、だ。行くのは構わないんだけど、行くまでの費用をどうしろと。もしかして自腹?まっさかー。流石に飛行機代とかは出費が痛いんですけど。私お金持ちって訳じゃないし。
それに住所は書いてあるけどどうやったら辿りつくかとか、地図なんかは一切入っていない。不親切にも程がある。
とりあえず来るんだったら連絡はアルにしてくれ、と書かれていたので、色んな疑問を抱えながらも私は部屋を飛び出した。
「おーいアルフレッドー、アルフー、アールフィーちゃーん」
「んー?やあ!!どうしたんだい?」
「あ、居た。やっほー」
いつものように庭先で呼びかけると、ひょっこりと飛び出たナンツケッツが緑の中で揺れる。
芝へ水やりをしていたアルフレッドは私に気付くと、ホースをテキパキと元の位置に戻してこっちに駆け寄ってきた。
からかう様にあだ名で呼んでやったのに、彼は全く反応を見せずにスルーしているみたいだった。くそー、やっぱり何十回も呼んでると耐性付くなあ。
最初に呼んであげた時は顔を真っ赤にして怒ってたのに、可愛くないなあ、もう。
「君はそんな事言いに来たのかい?もう暇な奴だなあ!」
「ははは、んな訳無いでしょー。私だって色々と忙しいんだよー」
「そうは見えないんだぞ!」
「まあね!」
HAHAHA!とお互い笑い合って右手の甲同士をこつん、とぶつけ合う。
中に入るように促されて柵が途切れている方へ回り込むと、水分を吸った緑の良い香りが鼻を擽った。
「それで、俺に何か用かい?」
「あー、うん。アーサーから手紙貰ったんだけどさ、」
「…」
うわあ、あからさまに嫌な顔してる。眼鏡の奥の青い瞳が怖いよアルフィちゃん。
今にも愚痴を吐きそうなその表情に苦笑しながら、アーサーに貰った手紙を差し出すと、アルフレッドは渋々中身に目を走らせる。
そして大きな溜め息。彼はぶつぶつと何か呟いていたけれど、声が小さ過ぎて上手く聞き取ることが出来なかった。
「頼んだぞ、ってこれの事だったのかい…。全く俺を何だと思ってるんだアーサーは」
「可愛い弟分?」
「それはないね」
「うん、私もそう思う。それで、行ってみたいんだけどどうすればいいの?」
首を傾げて聞いてみると、アルフレッドは嫌そうな顔はそのままに「行くのかい?」と口を尖らせる。
なによ、行っちゃ駄目なの、と頬を膨らませたら、片手で両頬を掴まれた。痛い。
そして頬を掴んでいない方の手で手紙をぐしゃぐしゃにしようとしてたので、慌てて封筒ごと手紙を奪い取る。危ない、もうちょっとで紙くずにされる所だった!本当にアルフレッドはアーサーの事気に入ってないんだなあ、もう!
まあ二人とも嫌いだって言い合いしてるらしいけど(実際には二回しか見てない、けど毎日のようにアルフレッドが愚痴を言ってるから何となく分かる)そんな風に見えないんだけどなあ。嬉しい時はすっごい嬉しそうな顔するし、二人とも。
アーサーは分かりやすいツンデレテンプレートを喋ってくれるから扱いやすいけど、アルフレッドもアーサーに負けないくらいツンデレなんだよね、実際見てると。
ツンデレ同士は分かりあえない事が多いしなあ…でも早く仲良くなって欲しいな、被害来るのこっちだから本当に勘弁してほしいし。
うんうん、と一人頷いて横目でアルフレッドを見やると、やっぱり何かもごもご言いながら出掛ける用意をしていた。
いつも来ているジャケットを羽織って、外していたらしい手袋を嵌めて、手には鍵らしき物が光っている。
その出で立ちに仕事かなあ、とぼんやり見ていたら、行き成り腕を掴まれてびっくりした。
「ふあ?何処か行くの?」
「そりゃあ君が行くっていったんだからね!仕方ないからイギリスまで送ってあげるよ!」
「え、ちょっと…ま、まだ何も用意してなああああ」
ああさよならワシントンD.C.。最後に見た綺麗な青空は忘れないよ!
ずるずると物凄い早さで引き摺られていく身体のバランスをなんとか保ちながら、私は現実逃避をするように天を仰いで太陽の眩しさに目を細めた(アルフレッドが「最後じゃないけどね!」と突っ込んだのは敢えて無視しておく)。
ロンドンの空は話に聞いていたように曇り空で、雨は降りそうじゃなかったけどワシントンD.C.とは全然違う空模様だった。
アルフレッドはアーサーがあんな性格だから空もどんよりとした曇り空なんだと言っていたけれど、私はどう返答すればいいのか分からず黙ったままだった。
初めて訪れたロンドンの街並みに目移りすると思ったけど、それもあんまりなくて、アルフレッドの後ろを付いて歩くついでに景色を見る程度だった。
もっと興味を示すと思ったのに、なんだか近所を歩いている感じがして別の国に来ていると言う感覚がしない。
変だなあ、と道の角にまで続いている鉄柵を見上げながら、私は呟いた。
「着いたよ」
「ん」
ぴたりと足を止めたアルフレッドが振り返る。顎で示された方向を見ると、立派な門の奥にひっそりと建つ年代物であろう館が鎮座していた。
如何にもアーサーが好みそうなその建物は、様々な草木で囲まれていておとぎ話に出てきそうな雰囲気だ。
ちょっとしたファンタジーの世界に入り込んだみたいで感動している私を余所に、アルフレッドは無造作に門を潜り抜けていく。
その後を慌てて追って行って、玄関の所まで小走りで向かう。ふわふわと漂うのは花の香りだろうか。
呼び鈴が押されて数分もしない内に中から物音が聞こえ、施錠されていた扉が開く。
ぎい、と木が軋む大きな音と共に現れたのは、この家の主であるアーサーだった。
「…。アル…お前な、来る時は電話しろとあれほど言っただろ馬鹿!」
「開口一番それかい!?もう折角を連れてきてあげたのに!」
「あ?それとこれとは話が別だろ!」
途端に始まるぎゃんぎゃんと叫び合う言い争いを横に、私ははあ、と溜め息を吐いた。全く変わり映えしないなこの人達は。口論を見るのはこれで三回目だけど、飽きるほど見た気がしてならない!
額に手を添え、他人事のように今日はいつまで続くのかなあ、と呟く。でもその呟きは二人の声によって一瞬にして掻き消されていた。
全く、ロンドンまで来て喧嘩するなんて何処からそんなにいっぱいネタが浮かんでくるんだろう。出会えば毎回のように喧嘩してるって話だけど、それだけ喧嘩してれば言い合いのネタが尽きるんじゃないのかなあ。私だったら一日で尽きちゃいそう。
よく飽きないなあ、そんなに喧嘩してて。いっそ尊敬しちゃうくらいだよ!これが彼らにとっては日課なのかな?うわあ、だったらすっごい近所迷惑。
今回も数分ほどあれはこうだの、それはああだの、と口論していたけれど、はた、とアーサーがこちらに気付くと、しまったと気まずそうな表情で視線を逸らした。
アルフレッドもそこで私の方を見て、私と同じように額に手を添えて呆れたように首を振る。自分が悪いと思ってないのか、彼は。
二人の喧嘩に漸く終止符が打たれ、そこでもう一度深い溜め息を吐くと、アーサーに謝られた。ごめん、って。初めて言われたのでちょっとびっくりした。
そして何かに気付いたように扉の奥へ消えていき、また直ぐにひょこりと薄い金髪を覗かせる。
「悪い、突然だったからこれ位しか用意出来ねえんだ。帰りにはもっと包んでやるよ」
「…。…ふああ!?あああもう馬鹿まゆげえ!」
「わあお!なんかアーサーが紳士っぽくて気持ち悪いんだぞ!」
「なっ…人が折角包んでやったのになんだよその返答!っばかあ!」
目の前に差し出された薔薇の花束に顔を埋もれさせ、私は何を言っていいのか分からず、アーサーみたいに叫ぶ。
ふわふわ漂う薔薇の香りは顔が熱い事を忘れさせるくらい、濃厚だった。
綺麗な筆記体で書かれた宛先は私宛で、裏に書いてある差出人の名前を目で追って、ちょっとばかし目を見開いた。
「…なんでアーサーが私の住所知ってるの?」
多少の疑問は残っているけれど、彼が送ってきたもので間違いなさそうなその手紙を捨てる訳にもいかず、ペーパーナイフで中身を切らないように綺麗に端を切っていく。
首を傾げながら数枚入っていたシンプルな便箋を広げてみると、そこには宛先と同じように綺麗な筆記体が間隔を開けて並んでいた。
えーと、なになに。この度は急なお手紙失礼し…ってこれ本当にあのアーサーが書いてるのかしら。なんか余所余所しい文章だなあ。
いつもの記念日のように「これはお前の為じゃなくて俺の為なんだからな!」みたいな感じのツンデレテンプレートの方が彼らしいと思うんだけど…手紙では敬語なんだ、意外。
つらつらと書かれている文章をゆっくりと目で追っていって、他の便箋にも目を通す。
「…ふむ、なるほど」
そして彼が何故突然手紙を出したのかを、納得。でもどうして私宛なのかは、理解不能。
手紙の中身は普通に知人に宛てて差し出された内容で、どう過ごしているのかとか、そんな日常話から始まっていた。
重要なのはその後で、今アーサーの家で薔薇が綺麗に咲いているらしく、良かったら見に来ないかと言うお誘いのメッセージが書かれていた事だ。
ガーデニングなんか一切しない私はまず最初にアーサーって庭いじりしてるんだ、と思い、今は秋なのに薔薇が咲いているんだ、と妙な所に感心した。普通は五月とかその辺だと思ってたから、何となく。
花を見るのは嫌いと言う訳では無いから、誘ってもらえるのは有難い。けれど、アーサーの家と言うのが不穏な響きだ。
彼はイギリスと言う国そのものなんだから、彼の住んでいる家ももちろんイギリス本国にあるのだろう。
で、だ。行くのは構わないんだけど、行くまでの費用をどうしろと。もしかして自腹?まっさかー。流石に飛行機代とかは出費が痛いんですけど。私お金持ちって訳じゃないし。
それに住所は書いてあるけどどうやったら辿りつくかとか、地図なんかは一切入っていない。不親切にも程がある。
とりあえず来るんだったら連絡はアルにしてくれ、と書かれていたので、色んな疑問を抱えながらも私は部屋を飛び出した。
「おーいアルフレッドー、アルフー、アールフィーちゃーん」
「んー?やあ!!どうしたんだい?」
「あ、居た。やっほー」
いつものように庭先で呼びかけると、ひょっこりと飛び出たナンツケッツが緑の中で揺れる。
芝へ水やりをしていたアルフレッドは私に気付くと、ホースをテキパキと元の位置に戻してこっちに駆け寄ってきた。
からかう様にあだ名で呼んでやったのに、彼は全く反応を見せずにスルーしているみたいだった。くそー、やっぱり何十回も呼んでると耐性付くなあ。
最初に呼んであげた時は顔を真っ赤にして怒ってたのに、可愛くないなあ、もう。
「君はそんな事言いに来たのかい?もう暇な奴だなあ!」
「ははは、んな訳無いでしょー。私だって色々と忙しいんだよー」
「そうは見えないんだぞ!」
「まあね!」
HAHAHA!とお互い笑い合って右手の甲同士をこつん、とぶつけ合う。
中に入るように促されて柵が途切れている方へ回り込むと、水分を吸った緑の良い香りが鼻を擽った。
「それで、俺に何か用かい?」
「あー、うん。アーサーから手紙貰ったんだけどさ、」
「…」
うわあ、あからさまに嫌な顔してる。眼鏡の奥の青い瞳が怖いよアルフィちゃん。
今にも愚痴を吐きそうなその表情に苦笑しながら、アーサーに貰った手紙を差し出すと、アルフレッドは渋々中身に目を走らせる。
そして大きな溜め息。彼はぶつぶつと何か呟いていたけれど、声が小さ過ぎて上手く聞き取ることが出来なかった。
「頼んだぞ、ってこれの事だったのかい…。全く俺を何だと思ってるんだアーサーは」
「可愛い弟分?」
「それはないね」
「うん、私もそう思う。それで、行ってみたいんだけどどうすればいいの?」
首を傾げて聞いてみると、アルフレッドは嫌そうな顔はそのままに「行くのかい?」と口を尖らせる。
なによ、行っちゃ駄目なの、と頬を膨らませたら、片手で両頬を掴まれた。痛い。
そして頬を掴んでいない方の手で手紙をぐしゃぐしゃにしようとしてたので、慌てて封筒ごと手紙を奪い取る。危ない、もうちょっとで紙くずにされる所だった!本当にアルフレッドはアーサーの事気に入ってないんだなあ、もう!
まあ二人とも嫌いだって言い合いしてるらしいけど(実際には二回しか見てない、けど毎日のようにアルフレッドが愚痴を言ってるから何となく分かる)そんな風に見えないんだけどなあ。嬉しい時はすっごい嬉しそうな顔するし、二人とも。
アーサーは分かりやすいツンデレテンプレートを喋ってくれるから扱いやすいけど、アルフレッドもアーサーに負けないくらいツンデレなんだよね、実際見てると。
ツンデレ同士は分かりあえない事が多いしなあ…でも早く仲良くなって欲しいな、被害来るのこっちだから本当に勘弁してほしいし。
うんうん、と一人頷いて横目でアルフレッドを見やると、やっぱり何かもごもご言いながら出掛ける用意をしていた。
いつも来ているジャケットを羽織って、外していたらしい手袋を嵌めて、手には鍵らしき物が光っている。
その出で立ちに仕事かなあ、とぼんやり見ていたら、行き成り腕を掴まれてびっくりした。
「ふあ?何処か行くの?」
「そりゃあ君が行くっていったんだからね!仕方ないからイギリスまで送ってあげるよ!」
「え、ちょっと…ま、まだ何も用意してなああああ」
ああさよならワシントンD.C.。最後に見た綺麗な青空は忘れないよ!
ずるずると物凄い早さで引き摺られていく身体のバランスをなんとか保ちながら、私は現実逃避をするように天を仰いで太陽の眩しさに目を細めた(アルフレッドが「最後じゃないけどね!」と突っ込んだのは敢えて無視しておく)。
ロンドンの空は話に聞いていたように曇り空で、雨は降りそうじゃなかったけどワシントンD.C.とは全然違う空模様だった。
アルフレッドはアーサーがあんな性格だから空もどんよりとした曇り空なんだと言っていたけれど、私はどう返答すればいいのか分からず黙ったままだった。
初めて訪れたロンドンの街並みに目移りすると思ったけど、それもあんまりなくて、アルフレッドの後ろを付いて歩くついでに景色を見る程度だった。
もっと興味を示すと思ったのに、なんだか近所を歩いている感じがして別の国に来ていると言う感覚がしない。
変だなあ、と道の角にまで続いている鉄柵を見上げながら、私は呟いた。
「着いたよ」
「ん」
ぴたりと足を止めたアルフレッドが振り返る。顎で示された方向を見ると、立派な門の奥にひっそりと建つ年代物であろう館が鎮座していた。
如何にもアーサーが好みそうなその建物は、様々な草木で囲まれていておとぎ話に出てきそうな雰囲気だ。
ちょっとしたファンタジーの世界に入り込んだみたいで感動している私を余所に、アルフレッドは無造作に門を潜り抜けていく。
その後を慌てて追って行って、玄関の所まで小走りで向かう。ふわふわと漂うのは花の香りだろうか。
呼び鈴が押されて数分もしない内に中から物音が聞こえ、施錠されていた扉が開く。
ぎい、と木が軋む大きな音と共に現れたのは、この家の主であるアーサーだった。
「…。アル…お前な、来る時は電話しろとあれほど言っただろ馬鹿!」
「開口一番それかい!?もう折角を連れてきてあげたのに!」
「あ?それとこれとは話が別だろ!」
途端に始まるぎゃんぎゃんと叫び合う言い争いを横に、私ははあ、と溜め息を吐いた。全く変わり映えしないなこの人達は。口論を見るのはこれで三回目だけど、飽きるほど見た気がしてならない!
額に手を添え、他人事のように今日はいつまで続くのかなあ、と呟く。でもその呟きは二人の声によって一瞬にして掻き消されていた。
全く、ロンドンまで来て喧嘩するなんて何処からそんなにいっぱいネタが浮かんでくるんだろう。出会えば毎回のように喧嘩してるって話だけど、それだけ喧嘩してれば言い合いのネタが尽きるんじゃないのかなあ。私だったら一日で尽きちゃいそう。
よく飽きないなあ、そんなに喧嘩してて。いっそ尊敬しちゃうくらいだよ!これが彼らにとっては日課なのかな?うわあ、だったらすっごい近所迷惑。
今回も数分ほどあれはこうだの、それはああだの、と口論していたけれど、はた、とアーサーがこちらに気付くと、しまったと気まずそうな表情で視線を逸らした。
アルフレッドもそこで私の方を見て、私と同じように額に手を添えて呆れたように首を振る。自分が悪いと思ってないのか、彼は。
二人の喧嘩に漸く終止符が打たれ、そこでもう一度深い溜め息を吐くと、アーサーに謝られた。ごめん、って。初めて言われたのでちょっとびっくりした。
そして何かに気付いたように扉の奥へ消えていき、また直ぐにひょこりと薄い金髪を覗かせる。
「悪い、突然だったからこれ位しか用意出来ねえんだ。帰りにはもっと包んでやるよ」
「…。…ふああ!?あああもう馬鹿まゆげえ!」
「わあお!なんかアーサーが紳士っぽくて気持ち悪いんだぞ!」
「なっ…人が折角包んでやったのになんだよその返答!っばかあ!」
目の前に差し出された薔薇の花束に顔を埋もれさせ、私は何を言っていいのか分からず、アーサーみたいに叫ぶ。
ふわふわ漂う薔薇の香りは顔が熱い事を忘れさせるくらい、濃厚だった。
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