Attention!
アーサーさんがどうしようもないへんたい。
えろすはぬるいです。大事な事なので二回言いました。
way to spend the holiday
散らかった本やゲームのディスクケース、落ちてる服を一つ一つ片付けて俺は溜め息を吐いた。
昔から片付けは苦手で、倉庫にも年代がバラバラになった物が散らばっている。段ボールや木箱に入れられたそれは数年前の物とつい最近の物、何十年以上の前の物が一緒くたになって今となっては印象の濃い物以外、はっきりとした年代が思い出せない位になってしまっている。
けど掃除はあの人がいつも五月蠅くて、せめて数日に一回くらいはしろと言われて嫌々している内に苦にならなくなった。
勿論片付けの事も言われたけど、何故かこっちは片付けても片付けてもいつの間にか部屋が物で溢れ返ってしまって話にならなかった。
彼もそんな状態の部屋を見て怒っていたけれど、それも段々と回数を重ねていく毎に減って行って、今では呆れて文句を言いつつ綺麗に片付けしてくれる。
その行為に甘えちゃいけないのは自分でも分かってるから、俺もなるべく一緒に片付けるけど、自分の物って言うのは中々どうやって整理をしていいのか分からない。
捨てていい物、悪い物の境界線を付けるのが難しくて、いつも必要の無い物でも取って置いてしまう。その集大成と呼べるのが倉庫なんだけども、今は敢えて無視しておこう。
散々彼に懐古主義だと言ってしまっているけど、こう懐かしい思い出なんかを中々手放せないでいると自分もその枠に入ってしまっている事を自覚してしまう。
あーあ、俺はまだこんなに若いのに。彼みたいに老大国って訳じゃないのになあ…。やっぱり育て親に似てこうなっちゃったんだろうか。うわあ、こんな所似てても困る。
はあ、ともう一度ふっかい溜め息を吐いて、棚の中の倒れているケースの横に集めたケースを押し込んだ。
汚いのは嫌いだからゴミとか埃は散乱していない。けど色んな物が重なり合ってごちゃごちゃしていた。
出したら出しっ放し、そう言う事を繰り返していたのだから積み重なっていくのは当たり前だ。
最近良く使うし、出してまた戻すのが面倒だと手の届く距離に置いてそのままにしていたら、いつの間にかそれがこんな事に。
おかげで床に敷いてあった絨毯が全く見えやしない。あー、床に落ちてる物全部片付けたら一回掃除機掛けないと。
散らばった服は一旦全部ベッドの上に置いて、くしゃくしゃになってしまっている物は手で軽くアイロンを掛ける。
きちんと折りたたむのはやっぱり面倒なので、クローゼットの中の空掛けになっているハンガーを全て取り出してネック部分に通していった。
ハンガーを全て使い切ってもまだ余ってしまう衣類は仕方なく折り畳んでクローゼットの中に押し込む。一応季節物で分けているけど、きっちり畳んでない所為か何処か不格好な仕舞い方になってしまっていた。でも敢えて気にしないんだぞ。
本は巻数を揃えて本棚に、小物は引き出しに押し込んで、何かの書類は書斎に持って行くとして一時保留。
そうやって時間を掛けながらもなんとか絨毯の蔓模様が見えるようになってきて、ほっと一息。
「はー、疲れたんだぞ…」
始めた時はまだお昼前だった筈なのに、今はもうお菓子でもつまんでまったりしてたい時間帯になってしまっていた。
こんなに時間が掛かるとは思わなかった。折角の休日だったのに、もう何処か行く気力も残ってさえいない。まあ、元から行く気は無かったけど。
むにゅむにゅ口を動かして書類を片付け軽く掃除機を掛けて、全開にしていた窓を閉める。籠っていた空気は入れ替えられて、片付ける前とは大違いの綺麗さっぱりとした部屋に変身していた。
これなら彼も合格点をくれるだろう。仕事終わりのついでに寄ったとは言っていたけど、まさか来た途端に部屋のチェックが入るとは思わなかった。
いつも来る前に連絡を入れてくれはするけど、今日の様に急だと片付けをする時間なんて全く無い訳で…。案の定、部屋の散らかり具合に怒られた。
そして今すぐ綺麗にしろ、と床に散らばる物を指差してぽこぽこ湯気を出しながらドアを閉められた。凄い怒り具合だったけど玄関のドアが開いた音は聞こえなかったので、きっとリビングで待っててくれてるんだと思う。
嫌なら帰れば良いのに、そんなに俺と一緒に過ごしたいのか、あの人は。…そうだと嬉しいけど、それならちゃんと言って欲しいなあ。君のツンデレを理解出来なかったらなんで帰って無いのか疑問に思っちゃうよ。
仕事終わりのついでとか言ってたのに。明日は休みなのかい?忙しいなら本国に戻らなくても大丈夫なのかい?今は日が落ちるのが早いから飛行機に乗らないんだったらそろそろホテルに行った方がいいんじゃないのかい?泊まる気かい、君は。
「…まあ…構わないんだけど、ね」
どうせ明日が休みだったらホテルになんか行かせない。彼の上司にでも電話して泊まる筈だったホテルはキャンセルするんだぞ、って言ってやるんだ。
そして一緒にテレビ見たりご飯食べたりして、まったりとした時間を二人で過ごすんだ。夜になったら一緒に寝て、そして。
頭に思い浮かべるだけでも顔が緩む。今日はもう疲れちゃったから、晩御飯は彼に作ってもらおうかなあ。あ、でも彼も仕事して来たんだよね。じゃあ二人で作ろうか。
冷蔵庫の中に何かあったっけなあ、と思い出しつつリビングのドアを開ける。テレビの音は聞こえていたから、やっぱり彼は帰っていないようだった。
でもいつもは時々ちゃんと片付けているか覗いてくるのに、今日はそれが無くて聊か疑問に思う。大人しくしてくれてるからいいんだけど。
「おーい、アーサー、片付け終わったんだ…ぞ…?」
ソファに座っているであろう彼に声を掛けた瞬間、甲高い女性の嬌声が響いた。
びくり、と俺は肩を震わせて進めていた足がぴたりと止まる。…え、ちょっと、待つんだぞ。
恐る恐る入り口からひょこりと頭を出してリビングをぐるりと見渡す。ソファにはアーサー一人、他は誰も居ない。その事にほっとする。
でも俺が黙っていても絶え間なくその女性の声は響いている。ついでにいつも彼と共にする夜のベッドの中で鳴らしてる音も加わっている。
…あー、嫌な予感が当たりませんように、当たりませんように。自己暗示してもう一度視線をリビングの方へ。ぐるりと一周、ソファの前のテレビでぴしり、と停止する。
「…ジーザス、何故当たっちゃったんだい」
ぐしゅぐしゅ、音が鳴る。それほど音量は大きくないけど、リビングに入れば嫌でも耳に入るくらいだった。
その音源は視線を止めたテレビから。セルフモザイクでも掛けたい位に肌色が画面を支配していた。ええええ、なんであの人AVなんか見てるの。意味分かんないんだけど(あ、北欧の方でこの言葉を口癖にしてる子が居たっけ)。
しかも両手がどう見ても下肢の方に行ってるんですけど。もしかしてもしかしなくとも、…なんて、今更思っても遅いんだろうな。
声を掛けた事に気付いていないのか、ソファの上の自称英国紳士さんは画面を見つめて手を上下している。あー、そんなに溜まってるのかい君は。
音を立てずに近付き、後ろに回ってみる。あと一歩で手が届く距離なのに、やっぱり気付かない。…夢中になっているにも程があると思うんだけど。
だらしなく開けた口に指でも突っ込んでやろうかと思ったけど寸での所で止めて、肩を叩くだけにする。
ぽん、とちょっと強めに彼の肩に手を置くと、びくっと大きく身体を揺らして金色の髪がぱさぱさと震えた。
「…ア、ル?」
「君、人の家で何してるんだい」
「あ、…え、……う」
驚きと見つかった事に対しての羞恥心とが混ざり合って彼の顔が赤くなったり青くなったりする。穴があったら入りたい状況って正に今の状況の事を言うんだろうなあ。
アーサーは言葉にならない呻き声を漏らして視線を彷徨わせ、最後にはぼん、と顔を真っ赤にしてぎぎぎ、と呟いた。あ、可愛い。
平気かい、と首を傾げて問いかける。答えは返ってこないけど、恨めしそうに睨みつけられた。
「…良いとこだったのに」
「問題はそこじゃないだろ、全く」
「だってお前が遅いから―…」
「片付けろって言ったの君だろ」
「…そう、だけど」
やっぱり待っててくれたんだ、と口元をにやつかせて返答したら、彼はう、と声を詰まらる。語尾に行くほど声が小さくなっていくのは反論する言葉が出てこないからだろう。
なにも困らせたくて問い詰めてる訳じゃないから、涙が浮かんできそうになっているアーサーの頬を撫でてあげる。まだぎぎぎ、と呟いていたけれど、落ち着きは取り戻しているようだった。
未だに流れている肌色ばっかりの映像はリモコンで消して(ちょっと君、なにがっかりした顔してるんだい!反省する気無いのかい!)、ソファの背凭れに肘をついた。
「君、オナニーする位溜まってたのかい?」
「っ!ちが、」
「わないよね。まさか俺の家でするなんて思わなかったんだぞ。しかも人が片付けしてる最中に」
「う…。もう…いいだろばかあ…!死にたい…」
「それは俺が許さないぞー」
DDDDと笑ってあげたら、結局泣かれた。
分かってる、分かってるよ。君はぐっちゃぐちゃに散らかった部屋が嫌いなんだよね。そんな部屋でセックスするなんて気が散って出来ないんだよね。
だから俺が掃除してる間我慢出来なくて自慰しちゃった訳だよね。あれ、でもそれって早く俺としたかったのかい?まだ昼間なのにさ。
きっとこの疑問は聞いても答えてくれないんだろうなあ。いつものばかあ!で返されそうだ。それが肯定を意味してるなんて君は気付いてなさそうだけど。
でももうそんな事しなくても大丈夫なんだぞ!君が一人でしちゃってた間、ちゃんと綺麗に片付けてあげたんだからさ。俺一人で片付けるなんて久しぶりだったんだぞ!褒めて欲しいくらいだよ、全く。
肌蹴た服は少しだけ直してあげて、その軽い身体をひょいっと持ち上げる。
ソファの後ろから抱き上げたから、自然とその持ち上げ方はお姫様抱っこだ。うん、ちらりと覗く鎖骨がセクシーだよダーリン。
お姫様抱っこが嫌なのか、アーサーはぎゃあ、と暴れて五月蠅かった。耳元で叫ばれるのは嫌なので噛みつくようにふっかいキスをしてあげる。
それだけでぴたりと俺を叩いていた手が止まって、しゅるしゅると意気消沈していく。目はとろんとしていつもの薄い緑が濃くなっていた。あ、えろい。
大人しくなった彼に満足して綺麗に片付けられた寝室のドアを開け、細い身体をぱふり、とベッドの上にダイブ。その上に俺も重なって、重さでベッドがぎしりと音を立てた。
「なあ…まだ昼だぞ…?」
「昼間からオナニーしてた君がそれを言うのかい?」
「…ばかあ…。…っん」
斜陽の光を背に受けて、仰向けになっている彼の薄い胸に口付ける。
さあ、二人っきりの休日を始めようか。ねえ、アーサー。
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[2009.12.17]