あおぞらのもとに、

 

白の世界。
目を閉じたまま、空の海を漂う感覚。
重力など感じさせない空間は、元の世界とは違うと「おれ」に理解させる。
目を開けようとしても、開ける事は出来ない。どうしてかは知らない。何故か、開けれない。

ここは何処だろう?

(まあ、何処でもいいけど)

自問自答しても、周りは何も変わらない。
当たり前だ。何も行動していないから。
自分で質問して、自分で答えて、それで何かが変わる筈もない。
また元通り、白の世界を漂うだけ。ただ、それだけ。

でも、一度意識が浮上してしまえば、漂っているだけでは暇だ。
自分はどうしてここに居るのか、ここは何処なのか、それは良く覚えていない。
でも、何かとても大切なことを忘れている気がする。
どうして、「おれ」はここに居るんだろう。

(なんだっけ、とても大切な、)

思い起こそうとしても、記憶はあやふやでぼやけている。
何か、とても大切な何か。…そう、自分の一部の様な…片割れの様な…。
そんな存在が、あった気がする。たぶん。

その事を思い出した途端、視界がどんどん開けてくる。
純白だった世界は少しずつ、ほんの少しずつ色が現れ、パステルカラーの淡い色が視界を埋めていく。
それと同時に、記憶の断片が少しずつ蘇ってくる。

(こ、れは)

わらってる。誰かの笑い声が聞こえる。
その笑い声を中心に、皆が笑顔になっていく。
みんな、しあわせそうに、わらっている。

それなのに、それを、「おれ」は、

(こわし、た)

太陽の様に光り輝いていた景色は一変して、辺りは薄暗くなる。
笑い合っていた声が一つ、また一つと減っていって、笑い声が無くなる。
それと同時に薄暗かった視界は真っ黒に染まった。

(…これ、は「おれ」の)

罪。

認識すれば、金色に鈍く光る双方の瞳が現れ、「おれ」を凝視する。
真っ黒なシルエットは誰かと似た形をしていた。
その影が低いトーンの男の声で何かを呟く。

『力を』
(いやだ)

影が手を伸ばす、

『世界を統べる力を』
(ききたくない)

金色の瞳から目を逸らす事が出来ない、

『その手にあるのは』
(やめてくれ)

白い何も描かれていない、いちまいのカード、


『超融合のカード』
(…おまえは、)

影が形作る姿は、

『我が名は、』


「おれ」のすがた。


(…は、おう)


ぜんぶ、おもいだした。