幸せな一日に乾杯!
おめでとう、おめでとう、我が国アメリカの独立を祝って、ハッピーインデペンデンス・デイ。
そうやって彼の誕生日を祝うようになってから、そろそろ一世紀が経とうとしている。
私が祝い始めてからはまだ十数年しか経っていないけれど、毎年この日になると周りは沢山の笑顔で溢れ返るのだ。
まるで世界中の全ての人達が彼を祝福するかのように、夜空には綺麗な花火が咲き誇る。
お腹に響く重低音は子供の頃からずっと聞いてきたもの。毎年見え方が違うそれは真っ暗な街を一瞬にして明るく照らしていく。
誰もが祝福するおめでたい日。カレンダーの日付は、七月四日だった。
「ハッピーバースディ、アルフレッド。随分と負のオーラが漂っているけど嬉しくないのかい?」
「…サンクス、。今日は俺の誕生日だぞ?嬉しいに決まってるじゃないか」
「それにしては声のトーンが低いね」
まるで頭に茸でも生やそうとしてるのかってくらいに、と付け足すと、今日の主役はどんよりと影を背負って苦笑した。
いつもならそんな湿気た雰囲気は全くと言って良いほど見せない彼なのに、どうして今日に限ってこんなにも暗いんだろう。
毎年のように彼、我が国アメリカであるアルフレッドの誕生日をお祝いしているけれど、たくさんのケーキに囲まれて破顔している姿しか頭に残って無くて、落ち込んでいる顔なんか一度も見た事が無かった。
そりゃあ、この日以外なら何度か神妙な顔つきになっている所を見た事があるけど、今日は彼にとって特別な日だから、笑っていないなんて変じゃないか。
何か悩み事でもあるのかなあ、とアルフレッドの隣に腰掛けると、彼の持っていたグラスの氷がカラリ、と音を立てる。今日はお祝いの席だからか、中身はお酒みたいだ。珍しい。
普段はアルコールの匂いなんて全くと言っていい程させていないのに、アルフレッドの頬は僅かに赤らんでいて、目は少しとろりとしていた。
「酔っぱらってる?」
「…んー、ちょっとだけね。でもまだ平気さ」
「そう?じゃあ私も付き合う事にしよう」
「ってお酒飲めたんだ」
そう言ってアルフレッドはグラスを傾ける動作をする。失敬な、私だって普段はそんなに飲まないけど、嗜む程度くらいなら余裕なんだよ。
ぷすりと頬を膨らませて棚にあるグラスを掴み取り、備え付けの製氷機の中の氷をグラスに割り入れてずらりと並んだ瓶の一つを取り出す。
色褪せたラベルは端の方が剥がれ落ちていたけれど、気にせずにボトルの栓を抜く。きゅぽん、と良い音を立てて栓が抜けると同時に、アルコールのきつい匂いが鼻についた。
「それ強くないかい?」
「水入れて割るからそうでもないよ。飲む?」
「いや、遠慮しとくよ」
まだ全部飲んでないしね、とグラスの中身を見つめる彼に私は簡素な相槌をして自分のグラスにお酒を注ぐ。
じんわりと頭に染み渡って行く香りは少しだけ甘く、綺麗なビビットカラーの色合いは見ているだけでも結構楽しい。
水で割ると淡い色になるそれを一口だけ飲み込むと、シロップの甘さが喉を通って行った。うん、美味い。
リキュールは見た目や味と違って度数が高く、ビールなどと比べると飲みやすい。今では女性に人気がある代物だけれど度数が高い分、酔い易いので注意しなければならない。
甘い所為でついジュース感覚で飲んでしまいがちだけど、そんな飲み方をすれば直ぐに潰れてしまう事だろう。私も初めは好奇心に揺さぶられてよく失敗したものだ。今となっては懐かしい思い出になっているけどね。
…まあそんな私の無駄話はとりあえず横に置いといて。今気に掛けるべきは隣のお若い青年だ。
「…で、アルフレッド君は何に悩んでいるんだい?」
「別に大した事じゃないよ。…って言うかその言い方おっさんくさい」
「えー、いつもは私が聞かずとも話してくれるのに気になるじゃない。…あとおっさん言わないで。まだ二十代だから」
「歳より先に性別云々のツッコミをしようよ…」
尤もらしいアルフレッド君の台詞は敢えて無視する事にして、本題の方をさくさく進めようじゃないか。
カウンターに肘を乗せて腕を組み、いつものように話を聞く姿勢になった私を見て彼は思いっきり口をへの字に曲がらせる。そんなに話すのが嫌なのかい、と頬を手の甲に乗せて聞いたら小さく否定された。
そしてグラスに口を付けながら、本当に大した事じゃないよ、と呟いてお酒を呷る。私よりも凹凸が大きい喉が上下してブラウンの液体がするりと消えて行く。
じっとその様子を見つめているとじろりと訝しんだ視線で睨み返されてしまった。ただ見てただけなのに、そんなに冷えた目で見つめないで欲しいな、全く。
別にやましい事なんか考えてないのにさ。まあちょっとだけ色気は感じたけど…って違う違う、なに自分から話を脱線させているんだ私は。
もう、私の事は横に置いといてって言ってるのに、さっさと吐いちゃいなさい、若人め!
「仕方ないなあ…、聞いた後でくだらないとか言わないでくれよ?」
「君をあれだけ暗くさせた悩みを一蹴したりはしないよ…たぶん」
「…最後の言葉は聞かなかった事にしてあげるよ。うーん、簡単に言うとね、に言われるような若いってイメージを払拭させるにはどうしたらいいのかなって考えてた感じかな」
…うん?それはつまりどう言う事だ。首を傾げたくなるアルフレッドの言葉に頭に疑問符が浮かぶ。
若いと言うイメージを払拭させたい、つまり若く見られたくない。イコール、彼は自分が若いと思われがちでそれを返上したい、と言う事?
アルコールが効き始めている頭でぼんやりと考えてみるけど、解釈が間違っていなければそう言う事だろう。
なるほど、彼が悩みたくなるのも頷ける。話を聞いての通り、私も彼は外見的にも内面的にも少々幼いと思っているし。
けどそれは個々が抱くイメージだから、人によって個人差があると思うんだけどな。私だって年相応と呼ばれる事もあるし、さっき言われた通り、ちょっとおっさん臭い所もあるからそこを指摘されたりもするしね。
カラカラとグラスを音立てながらアルフレッドにそう言うと、彼もこくりと頷いた。
「そうなんだけどね。でもやっぱり自分でも子供っぽい所があるのは分かってるから、何とかしたいなーって」
「ふぅん…、じゃあ手っ取り早い所で煙草でも吸ってみたら?おっさんに見えるよー」
「煙たいからやだよ」
「ははは、お子様め」
口を尖らせるアルフレッドは心底嫌そうに眉間に皺を寄せて目を伏せる。瞬きする毎に艶やかなスカイブルーが揺れてまるでガラス玉みたい。
彼はお子様の単語が気に食わなかったのか、ぷすりと私の頬を突いていたけどそれで怒鳴ったりはしない。だって段々アルコールも効いてきた事だし、怒って酒の席を台無しにしたくないじゃない。
それに、どうせならからかった方が面白いし。棒読みでからりと笑いながらそんな事を考え、半分ほど残っていたお酒を少しずつ口に含む。
アルフレッドは私みたいにねじ曲がった考えを持っている訳じゃないから、からかうと直ぐに期待通りの反応を返してくれる。それが楽しくて可愛らしくて好きなんだ。
時には予想の斜め上を行く反応もしてくれるけどね。私の身近にはそう言う人があまり居ないから、つい彼にちょっかいを出したくなっちゃうのだ。まあ、いい加減にして欲しいとかよく怒られるけど。
「そう言うはどうなんだい?煙草吸ってる所なんて見た事無いんだぞ」
「吸えない事は無い、とだけ言っておくよ。そもそも煙草嫌いだし」
「嫌いなものを勧めないでくれよ〜…」
ははは、私は君と違って捻くれてるから仕方が無いのさ。
にこにこしながらそう言うと、子供みたいにブーイングされた。…むう。
「じゃあ髭生やしたら?ダンディになるよー」
「俺には似合わないよ」
「うん、私もそう思う」
即答したら今度は無言で睨み返された。無言は怖いよアルフレッド君。
でも今は似合わなくても、もうちょっと見た目が老けたら結構似合うと思うんだよね、ジェントルマンみたいにさ。
その老いがいつ訪れるかは私じゃあさっぱり分からないけどね。本当、国の人達は不思議な存在だなあ。
彼等の成長は国の情勢によって左右されると言うから、じっくりと成長する人も居ればアルフレッドみたいに数十年で急成長する人だっているらしい。
我が国は各国の中でもまだまだ歴史が浅いから、アルフレッドの姿もまだ子供と言えるティーンの姿なんだろうな。
だったら今彼がイメージを変える為に努力をしても無駄なんじゃないか、そう疑問に思う人も居るかもしれない。現実的に見るとそれは正論だし、私も否定はしない。
…でもさ、こんなにも悩んでいる子が居たら、手を差し伸べたくなるじゃない。外から見ても何も変わらないかもしれないけれど、精神的に成長する事が無いとは言い切れないしね!
だから私はお節介ながらアドバイスをするのだ。…まあ、本音を言うと半分ほどジョークが入っているけど。もちろん残りの半分は真剣に考えているよ!
「うーん、なら眼鏡とか掛ければ良いんじゃない?似合うと思うよ」
「…俺、目なんか悪くないんだぞ」
「ほら、そこは伊達眼鏡でさ。度が入って無い物を使うとかね」
「んー…やっとマトモな案が出たね」
「失敬な、さっきのもマトモな案のつもりだよ」
半分くらいね、と最後に付けたしたら今度は髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き混ぜられた。もー、冗談に決まってるじゃないか!
ぽこぽこと頭から湯気を出して頬を膨らませると、さっきとは逆に私がからかわれてしまう。
まるで子供みたいにじゃれ合って、何してるんだ私達は。随分アルコールが回ってきたのかな?でも楽しいからいいや。アルフレッドも出会った時より大分明るくなったしね。
やっぱり今日と言う日はこうでなくちゃ。うんうん、そうと決まれば新しいお酒でお祝いしよう、大切なこの日を!
「インデペンデンス・デイ、おめでとう!」
そうやって彼の誕生日を祝うようになってから、そろそろ一世紀が経とうとしている。
私が祝い始めてからはまだ十数年しか経っていないけれど、毎年この日になると周りは沢山の笑顔で溢れ返るのだ。
まるで世界中の全ての人達が彼を祝福するかのように、夜空には綺麗な花火が咲き誇る。
お腹に響く重低音は子供の頃からずっと聞いてきたもの。毎年見え方が違うそれは真っ暗な街を一瞬にして明るく照らしていく。
誰もが祝福するおめでたい日。カレンダーの日付は、七月四日だった。
「ハッピーバースディ、アルフレッド。随分と負のオーラが漂っているけど嬉しくないのかい?」
「…サンクス、。今日は俺の誕生日だぞ?嬉しいに決まってるじゃないか」
「それにしては声のトーンが低いね」
まるで頭に茸でも生やそうとしてるのかってくらいに、と付け足すと、今日の主役はどんよりと影を背負って苦笑した。
いつもならそんな湿気た雰囲気は全くと言って良いほど見せない彼なのに、どうして今日に限ってこんなにも暗いんだろう。
毎年のように彼、我が国アメリカであるアルフレッドの誕生日をお祝いしているけれど、たくさんのケーキに囲まれて破顔している姿しか頭に残って無くて、落ち込んでいる顔なんか一度も見た事が無かった。
そりゃあ、この日以外なら何度か神妙な顔つきになっている所を見た事があるけど、今日は彼にとって特別な日だから、笑っていないなんて変じゃないか。
何か悩み事でもあるのかなあ、とアルフレッドの隣に腰掛けると、彼の持っていたグラスの氷がカラリ、と音を立てる。今日はお祝いの席だからか、中身はお酒みたいだ。珍しい。
普段はアルコールの匂いなんて全くと言っていい程させていないのに、アルフレッドの頬は僅かに赤らんでいて、目は少しとろりとしていた。
「酔っぱらってる?」
「…んー、ちょっとだけね。でもまだ平気さ」
「そう?じゃあ私も付き合う事にしよう」
「ってお酒飲めたんだ」
そう言ってアルフレッドはグラスを傾ける動作をする。失敬な、私だって普段はそんなに飲まないけど、嗜む程度くらいなら余裕なんだよ。
ぷすりと頬を膨らませて棚にあるグラスを掴み取り、備え付けの製氷機の中の氷をグラスに割り入れてずらりと並んだ瓶の一つを取り出す。
色褪せたラベルは端の方が剥がれ落ちていたけれど、気にせずにボトルの栓を抜く。きゅぽん、と良い音を立てて栓が抜けると同時に、アルコールのきつい匂いが鼻についた。
「それ強くないかい?」
「水入れて割るからそうでもないよ。飲む?」
「いや、遠慮しとくよ」
まだ全部飲んでないしね、とグラスの中身を見つめる彼に私は簡素な相槌をして自分のグラスにお酒を注ぐ。
じんわりと頭に染み渡って行く香りは少しだけ甘く、綺麗なビビットカラーの色合いは見ているだけでも結構楽しい。
水で割ると淡い色になるそれを一口だけ飲み込むと、シロップの甘さが喉を通って行った。うん、美味い。
リキュールは見た目や味と違って度数が高く、ビールなどと比べると飲みやすい。今では女性に人気がある代物だけれど度数が高い分、酔い易いので注意しなければならない。
甘い所為でついジュース感覚で飲んでしまいがちだけど、そんな飲み方をすれば直ぐに潰れてしまう事だろう。私も初めは好奇心に揺さぶられてよく失敗したものだ。今となっては懐かしい思い出になっているけどね。
…まあそんな私の無駄話はとりあえず横に置いといて。今気に掛けるべきは隣のお若い青年だ。
「…で、アルフレッド君は何に悩んでいるんだい?」
「別に大した事じゃないよ。…って言うかその言い方おっさんくさい」
「えー、いつもは私が聞かずとも話してくれるのに気になるじゃない。…あとおっさん言わないで。まだ二十代だから」
「歳より先に性別云々のツッコミをしようよ…」
尤もらしいアルフレッド君の台詞は敢えて無視する事にして、本題の方をさくさく進めようじゃないか。
カウンターに肘を乗せて腕を組み、いつものように話を聞く姿勢になった私を見て彼は思いっきり口をへの字に曲がらせる。そんなに話すのが嫌なのかい、と頬を手の甲に乗せて聞いたら小さく否定された。
そしてグラスに口を付けながら、本当に大した事じゃないよ、と呟いてお酒を呷る。私よりも凹凸が大きい喉が上下してブラウンの液体がするりと消えて行く。
じっとその様子を見つめているとじろりと訝しんだ視線で睨み返されてしまった。ただ見てただけなのに、そんなに冷えた目で見つめないで欲しいな、全く。
別にやましい事なんか考えてないのにさ。まあちょっとだけ色気は感じたけど…って違う違う、なに自分から話を脱線させているんだ私は。
もう、私の事は横に置いといてって言ってるのに、さっさと吐いちゃいなさい、若人め!
「仕方ないなあ…、聞いた後でくだらないとか言わないでくれよ?」
「君をあれだけ暗くさせた悩みを一蹴したりはしないよ…たぶん」
「…最後の言葉は聞かなかった事にしてあげるよ。うーん、簡単に言うとね、に言われるような若いってイメージを払拭させるにはどうしたらいいのかなって考えてた感じかな」
…うん?それはつまりどう言う事だ。首を傾げたくなるアルフレッドの言葉に頭に疑問符が浮かぶ。
若いと言うイメージを払拭させたい、つまり若く見られたくない。イコール、彼は自分が若いと思われがちでそれを返上したい、と言う事?
アルコールが効き始めている頭でぼんやりと考えてみるけど、解釈が間違っていなければそう言う事だろう。
なるほど、彼が悩みたくなるのも頷ける。話を聞いての通り、私も彼は外見的にも内面的にも少々幼いと思っているし。
けどそれは個々が抱くイメージだから、人によって個人差があると思うんだけどな。私だって年相応と呼ばれる事もあるし、さっき言われた通り、ちょっとおっさん臭い所もあるからそこを指摘されたりもするしね。
カラカラとグラスを音立てながらアルフレッドにそう言うと、彼もこくりと頷いた。
「そうなんだけどね。でもやっぱり自分でも子供っぽい所があるのは分かってるから、何とかしたいなーって」
「ふぅん…、じゃあ手っ取り早い所で煙草でも吸ってみたら?おっさんに見えるよー」
「煙たいからやだよ」
「ははは、お子様め」
口を尖らせるアルフレッドは心底嫌そうに眉間に皺を寄せて目を伏せる。瞬きする毎に艶やかなスカイブルーが揺れてまるでガラス玉みたい。
彼はお子様の単語が気に食わなかったのか、ぷすりと私の頬を突いていたけどそれで怒鳴ったりはしない。だって段々アルコールも効いてきた事だし、怒って酒の席を台無しにしたくないじゃない。
それに、どうせならからかった方が面白いし。棒読みでからりと笑いながらそんな事を考え、半分ほど残っていたお酒を少しずつ口に含む。
アルフレッドは私みたいにねじ曲がった考えを持っている訳じゃないから、からかうと直ぐに期待通りの反応を返してくれる。それが楽しくて可愛らしくて好きなんだ。
時には予想の斜め上を行く反応もしてくれるけどね。私の身近にはそう言う人があまり居ないから、つい彼にちょっかいを出したくなっちゃうのだ。まあ、いい加減にして欲しいとかよく怒られるけど。
「そう言うはどうなんだい?煙草吸ってる所なんて見た事無いんだぞ」
「吸えない事は無い、とだけ言っておくよ。そもそも煙草嫌いだし」
「嫌いなものを勧めないでくれよ〜…」
ははは、私は君と違って捻くれてるから仕方が無いのさ。
にこにこしながらそう言うと、子供みたいにブーイングされた。…むう。
「じゃあ髭生やしたら?ダンディになるよー」
「俺には似合わないよ」
「うん、私もそう思う」
即答したら今度は無言で睨み返された。無言は怖いよアルフレッド君。
でも今は似合わなくても、もうちょっと見た目が老けたら結構似合うと思うんだよね、ジェントルマンみたいにさ。
その老いがいつ訪れるかは私じゃあさっぱり分からないけどね。本当、国の人達は不思議な存在だなあ。
彼等の成長は国の情勢によって左右されると言うから、じっくりと成長する人も居ればアルフレッドみたいに数十年で急成長する人だっているらしい。
我が国は各国の中でもまだまだ歴史が浅いから、アルフレッドの姿もまだ子供と言えるティーンの姿なんだろうな。
だったら今彼がイメージを変える為に努力をしても無駄なんじゃないか、そう疑問に思う人も居るかもしれない。現実的に見るとそれは正論だし、私も否定はしない。
…でもさ、こんなにも悩んでいる子が居たら、手を差し伸べたくなるじゃない。外から見ても何も変わらないかもしれないけれど、精神的に成長する事が無いとは言い切れないしね!
だから私はお節介ながらアドバイスをするのだ。…まあ、本音を言うと半分ほどジョークが入っているけど。もちろん残りの半分は真剣に考えているよ!
「うーん、なら眼鏡とか掛ければ良いんじゃない?似合うと思うよ」
「…俺、目なんか悪くないんだぞ」
「ほら、そこは伊達眼鏡でさ。度が入って無い物を使うとかね」
「んー…やっとマトモな案が出たね」
「失敬な、さっきのもマトモな案のつもりだよ」
半分くらいね、と最後に付けたしたら今度は髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き混ぜられた。もー、冗談に決まってるじゃないか!
ぽこぽこと頭から湯気を出して頬を膨らませると、さっきとは逆に私がからかわれてしまう。
まるで子供みたいにじゃれ合って、何してるんだ私達は。随分アルコールが回ってきたのかな?でも楽しいからいいや。アルフレッドも出会った時より大分明るくなったしね。
やっぱり今日と言う日はこうでなくちゃ。うんうん、そうと決まれば新しいお酒でお祝いしよう、大切なこの日を!
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