Attention!
※宗教話を含んでいますので注意。
神話的願望方法
神様が存在しているのかと聞かれれば、私はどう答えるんだろう。
無神論者でもなければ、街の人々と同じようなプロテスタントでもない。
天に祈りを捧げる事も無いし、日曜日のミサに出席する事も、私には無かった。
けど、神様を信じていると聞かれれば、きっと答えはイエスなんだろう。
「ねえアルフレッド」
「…ん?なんだい」
「君は神様を信じる?」
ぽつりと呟く言葉はふわふわのスカートの奥でくぐもる。部屋に響く声は私と、傍に居たアルフレッドだけだ。
椅子の上で膝を折り曲げている私は彼が手入れをしているマスケットをじっと見つめて、視線を上げる。ぱちりと彼と目が合ったけど、自然に逸らしてまたマスケットの方に視線を戻す。
突拍子の無い問い掛けにアルフレッドは目を瞬かせていたけど、少しだけ間を置いて眉間に皺を寄せた。あー、君の皮膚って柔らかいのに、そんなに深い皺を寄せると跡が残るよ。
「ねえ、君は明日が何の日か知ってて言ってる?」
「うん、知ってるよ。君のお兄さんから独立する日なんでしょ?」
「まだ決まった訳じゃあ、無いけど…きっとそうなるだろうね。それを知ってて聞くなんて…君は酷いなあ」
「そうかな?こんな時だからこそ逆に聞きたいと思うな、アルフレッド」
くすり、と笑みを深くさせて、さっきと同じ問い掛けをする。ねえ、君と言う存在は神様を信じるかい?
アルフレッドは作業していた手を止めて、私の方へ改めて向き直る。ぎゅっと握られた布は使い古されたようによれていた。
「俺個人としては、正直信じてないかな」
「そうなんだ。てっきり皆と同じかと思ってた」
「国としては信じてるかもね。国民の大半がそうなんだし」
そう言ってアルフレッドは椅子を動かして、私の近くへと寄ってくる。私はどうすればいいのか少し悩んだけど、結局足を動かしただけでその場から動く事は無かった。
やっぱり彼の言っている事は難しい。言葉にしても本質を理解するには私じゃまだ年齢不足だった。
でも頭の中で文章を復唱して砕いていくと何となく分かる。アルフレッド自身は神様を信じてないけど、国としての彼は信じてるって事で、つまりえーっと。ああ、ややこしい。
答えを求めていたのは彼個人の方だから、答えとしては信じてない、方が合っているんだろう。多分。
国自身なんだから中の人達と同じで信じているのかと思っていたのに、意外な返答をされてちょっとびっくりした。
けどまあ、私みたいな奴だっているんだからアルフレッドの答えはそれほど変って訳じゃないのかな。だって信じてなかったら五分五分になるし。
国民全員が神様を信じている訳じゃないんだし、彼個人の意見だとしてもどちらか一方に偏らないのは少数派の人間からして嬉しい事だろう。微妙な立場に居る私でさえ最近信者の方からの視線が痛かったし。
「それにしてもどうして急にそんな事聞いてきたんだい?普段から無縁そうなのに」
「最後の言葉は余計だよ。んー…別に、さっき言った通り、今だからこそ聞きたかったんだよ」
「えー、怪しい」
じいっと半目で睨んでくるアルフレッドをくるりと頭を振る事で避ける。彼から背けられた視線の先には真っ白な壁紙しかなくて直ぐに飽きてしまった。
再びアルフレッドの方に向き直ると、さっきと変わらずアルフレッドはじいっとこちらを見つめていた。時折怪しい、と呟かれているのは気の所為だと思いたい。
本当の所を言うと、彼が言う通り私は宗教などには正直興味がない。人と同じ生活をするのが元々嫌いだし、定期的に教会に行かなければならないのもはっきり言うと面倒だ。
私には縁遠いものだと日々思っていた筈のそんな話題。神様だってどちらかと言えば信じているだけで、もし存在していないと断言されてもはいそうですか、で終わると思う。
居ても居なくても構わない。でも何となく信じていたいのは、きっと都合が良いからなんだろう。何でもかんでも神様の所為にしてしまえば心が楽になるから。
あー、自分でやっててはずかし。人って本当に強欲なんだなあ。あ、でも宗教は基本的に禁欲なんだっけ。じゃあ懺悔して許してもらおうとするのは欲じゃあないのかなあ。…うーん、分からないから考えるのはここまでにしておこう。
頬をぷすりと膨らませて膝を抱え直す。アルフレッドはもう追求する事を諦めたようで、またマスケットの方へ視線を戻していた。
「ねえアルフレッド、神様は居ると思う?」
「…またそれかい?怪しいからもう答えないよ」
「あ、ケチ」
「君こそ」
お互い腹の探り合い。じいっと見合っていると端から何してるんだってつっこみが入りそうだ。
さらさらと落ちてくる髪の毛を耳に掛けて手に顎をつく。口元を吊り上げるだけの笑みを浮かべたら、アルフレッドの肩が揺れた。
頬がほんのりと赤くなる彼に首を傾げ、にこりと笑う。ああ、そうか。もしかして思春期って奴かい、ジョーンズ君。
あんまり女の子と話す機会が無いからそんな反応するのかな。立場上仕方のない事だけどちょっと可哀想かも。人で言うと彼の外見は青春真っ只中なんだし(そうでもないかな?とにかく、異性に触れないのは可哀想だって事!)。
ではどうして私は今現在、彼と親しげに話しているのかと言うと、まあ、それなりに良い所の出だとだけ言っておこう。だから私が小さい頃から親切にして貰っているのだ。
「…理由、そんなに聞きたい?」
「むう…勿体ぶられるとそりゃ聞きたくなるよ」
「うん、そうだね。ごめん」
素直に謝ったらびっくりされた。なんでだよーって唸ったら、珍しいからだってさ。まあ、普段から悪い事をしてる訳じゃあないからそうかもしれないけどさ。
ぽこぽこと頭から湯気を出して怒っていたら、今度はアルフレッドの方が謝ってくる。私も同じように目を丸くしたら、同じように唸られた。だって、珍しいんだもん。
足を床に戻してふっと息を吐く。風で揺れた髪の毛はそれほど多くなかった。
「…母さんがね、昨日亡くなったんだ。突然の発作でさ。…神様は守ってくれなかったんだ、あの人の事」
「…それで、俺に聞いたのかい?」
「うん、アルフレッドならどう答えるかなってね。私は神様を信じて良いのか悪いのか、分からなくなっちゃったから」
「…」
変だよね、そんな事をしても居なくなってしまった人が帰ってくる筈無いのにさ。
それでも聞きたかったのは…進むべき道が見えなくなってしまったからだ。人は簡単に死んでしまうと言うのに、ただ一人の存在が消えただけで目の前が真っ暗になったみたいになる。親だから、余計にそう思うのかもしれない。
身近に居た人だからこそ思ってしまう。どうして神様は助けてくれなかったの、と。結局辿りつく先は責任の擦り付けだと言うのに。
分かってる筈なのに認めたくない。ああ、はずかし。なんて私は罪深く強欲なんだろうな。大切な人を失って悲しむのは私一人じゃないのにさ。
黙ってしまったアルフレッドに申し訳なくて、私は椅子から立ち上がった。かつかつ、と靴を鳴らして数歩歩けば、顔を伏せた彼に直ぐ手が届く。
ごめんね、明日は大切な日なのにこんな話をしちゃって。そんなに気難しい顔をさせたかった訳じゃないんだ。だからほら、スマイルスマイル。
「アルフレッド、顔上げて」
「…君はどうして平気そうなんだい?昨日の今日なんだろう?」
「うん、内心すっごく泣きたい気分だよ。でもこんな大事な時に泣き叫ぶ訳にはいかないよ。母さんもきっとそう思ってる」
もちろん父さんだって、と眉尻を下げるアルフレッドに呟く。そう、こんな大事な時に悲しんでなんかいられない。
明日はこの国に国民に私に、そして彼にとって大切な日になるだろう。アメリカと言う国の歴史が大きく動く時、それがきっと明日だ。
それなのに国である彼が悲しんでいるのは国民にとって良くない影響を与えるだろう。笑って堂々と新しい旗を背負って、彼は宣言しなければならないのだから。
ぽつりとまたごめんね、と呟くと、アルフレッドは目尻を細めて私に手を伸ばす。ふ、と触れた右手はちょっとかさついていた。
「、君は神様が居ないと思うかい?」
「…分からないよ。でもやっぱり空想だと思っちゃうね」
「そうかい?…君の中には居ると思うけどな、神様」
「えー?」
なにそれ、変なの。私の中に居たんじゃ他の人達に恩恵を与える事なんて出来ないじゃない。
むに、と両手で彼の頬を掴んで引っ張り、口をへの字に曲がらせる。痛いと呟かれた言葉は軽く無視して続けたら、アルフレッドも同じように私の頬を引っ張ってきた。痛い、こら何するの。
さらさらふわふわのブロンドが混じり合ってどっちの髪なのか分からない。私の髪がまるで金の糸みたいにアルフレッドに流れ落ちる。うっとおしそうに掻き分けられたので後ろ髪も追加してやったら怒られた。
でもその怒った声も次第に途切れて、二人で笑い合う。何してるんだろうね、私達。じゃれ合いとか?…ばか、それ子供みたいじゃない。
すとんとアルフレッドの足に腰を落とすと、ずり落ちないように抱きかかえられた。小さい頃からしてたそれは目線が高くなった今でも時々やっていて、多分これが最後なんじゃないかなと思った。だって明日からはもっと彼は忙しくなってしまうから。
床についてしまいそうなスカートを手繰り寄せてこてり、とアルフレッドの肩に頭を乗せる。そしたらよしよし、と頭を撫でてくれた。くすぐったい。
「まあいいや、アルフレッドがそう言うのなら、今後のアメリカの為にお祈りしてあげよう」
「勝利の女神って奴かい?」
「あはは、そうかもねー。そして一段落着いたら散々泣くと思うから、その時は肩貸して頂戴」
「お安い御用さ!」
うん、じゃあそれまで涙は取っておく事にするよ!
無神論者でもなければ、街の人々と同じようなプロテスタントでもない。
天に祈りを捧げる事も無いし、日曜日のミサに出席する事も、私には無かった。
けど、神様を信じていると聞かれれば、きっと答えはイエスなんだろう。
「ねえアルフレッド」
「…ん?なんだい」
「君は神様を信じる?」
ぽつりと呟く言葉はふわふわのスカートの奥でくぐもる。部屋に響く声は私と、傍に居たアルフレッドだけだ。
椅子の上で膝を折り曲げている私は彼が手入れをしているマスケットをじっと見つめて、視線を上げる。ぱちりと彼と目が合ったけど、自然に逸らしてまたマスケットの方に視線を戻す。
突拍子の無い問い掛けにアルフレッドは目を瞬かせていたけど、少しだけ間を置いて眉間に皺を寄せた。あー、君の皮膚って柔らかいのに、そんなに深い皺を寄せると跡が残るよ。
「ねえ、君は明日が何の日か知ってて言ってる?」
「うん、知ってるよ。君のお兄さんから独立する日なんでしょ?」
「まだ決まった訳じゃあ、無いけど…きっとそうなるだろうね。それを知ってて聞くなんて…君は酷いなあ」
「そうかな?こんな時だからこそ逆に聞きたいと思うな、アルフレッド」
くすり、と笑みを深くさせて、さっきと同じ問い掛けをする。ねえ、君と言う存在は神様を信じるかい?
アルフレッドは作業していた手を止めて、私の方へ改めて向き直る。ぎゅっと握られた布は使い古されたようによれていた。
「俺個人としては、正直信じてないかな」
「そうなんだ。てっきり皆と同じかと思ってた」
「国としては信じてるかもね。国民の大半がそうなんだし」
そう言ってアルフレッドは椅子を動かして、私の近くへと寄ってくる。私はどうすればいいのか少し悩んだけど、結局足を動かしただけでその場から動く事は無かった。
やっぱり彼の言っている事は難しい。言葉にしても本質を理解するには私じゃまだ年齢不足だった。
でも頭の中で文章を復唱して砕いていくと何となく分かる。アルフレッド自身は神様を信じてないけど、国としての彼は信じてるって事で、つまりえーっと。ああ、ややこしい。
答えを求めていたのは彼個人の方だから、答えとしては信じてない、方が合っているんだろう。多分。
国自身なんだから中の人達と同じで信じているのかと思っていたのに、意外な返答をされてちょっとびっくりした。
けどまあ、私みたいな奴だっているんだからアルフレッドの答えはそれほど変って訳じゃないのかな。だって信じてなかったら五分五分になるし。
国民全員が神様を信じている訳じゃないんだし、彼個人の意見だとしてもどちらか一方に偏らないのは少数派の人間からして嬉しい事だろう。微妙な立場に居る私でさえ最近信者の方からの視線が痛かったし。
「それにしてもどうして急にそんな事聞いてきたんだい?普段から無縁そうなのに」
「最後の言葉は余計だよ。んー…別に、さっき言った通り、今だからこそ聞きたかったんだよ」
「えー、怪しい」
じいっと半目で睨んでくるアルフレッドをくるりと頭を振る事で避ける。彼から背けられた視線の先には真っ白な壁紙しかなくて直ぐに飽きてしまった。
再びアルフレッドの方に向き直ると、さっきと変わらずアルフレッドはじいっとこちらを見つめていた。時折怪しい、と呟かれているのは気の所為だと思いたい。
本当の所を言うと、彼が言う通り私は宗教などには正直興味がない。人と同じ生活をするのが元々嫌いだし、定期的に教会に行かなければならないのもはっきり言うと面倒だ。
私には縁遠いものだと日々思っていた筈のそんな話題。神様だってどちらかと言えば信じているだけで、もし存在していないと断言されてもはいそうですか、で終わると思う。
居ても居なくても構わない。でも何となく信じていたいのは、きっと都合が良いからなんだろう。何でもかんでも神様の所為にしてしまえば心が楽になるから。
あー、自分でやっててはずかし。人って本当に強欲なんだなあ。あ、でも宗教は基本的に禁欲なんだっけ。じゃあ懺悔して許してもらおうとするのは欲じゃあないのかなあ。…うーん、分からないから考えるのはここまでにしておこう。
頬をぷすりと膨らませて膝を抱え直す。アルフレッドはもう追求する事を諦めたようで、またマスケットの方へ視線を戻していた。
「ねえアルフレッド、神様は居ると思う?」
「…またそれかい?怪しいからもう答えないよ」
「あ、ケチ」
「君こそ」
お互い腹の探り合い。じいっと見合っていると端から何してるんだってつっこみが入りそうだ。
さらさらと落ちてくる髪の毛を耳に掛けて手に顎をつく。口元を吊り上げるだけの笑みを浮かべたら、アルフレッドの肩が揺れた。
頬がほんのりと赤くなる彼に首を傾げ、にこりと笑う。ああ、そうか。もしかして思春期って奴かい、ジョーンズ君。
あんまり女の子と話す機会が無いからそんな反応するのかな。立場上仕方のない事だけどちょっと可哀想かも。人で言うと彼の外見は青春真っ只中なんだし(そうでもないかな?とにかく、異性に触れないのは可哀想だって事!)。
ではどうして私は今現在、彼と親しげに話しているのかと言うと、まあ、それなりに良い所の出だとだけ言っておこう。だから私が小さい頃から親切にして貰っているのだ。
「…理由、そんなに聞きたい?」
「むう…勿体ぶられるとそりゃ聞きたくなるよ」
「うん、そうだね。ごめん」
素直に謝ったらびっくりされた。なんでだよーって唸ったら、珍しいからだってさ。まあ、普段から悪い事をしてる訳じゃあないからそうかもしれないけどさ。
ぽこぽこと頭から湯気を出して怒っていたら、今度はアルフレッドの方が謝ってくる。私も同じように目を丸くしたら、同じように唸られた。だって、珍しいんだもん。
足を床に戻してふっと息を吐く。風で揺れた髪の毛はそれほど多くなかった。
「…母さんがね、昨日亡くなったんだ。突然の発作でさ。…神様は守ってくれなかったんだ、あの人の事」
「…それで、俺に聞いたのかい?」
「うん、アルフレッドならどう答えるかなってね。私は神様を信じて良いのか悪いのか、分からなくなっちゃったから」
「…」
変だよね、そんな事をしても居なくなってしまった人が帰ってくる筈無いのにさ。
それでも聞きたかったのは…進むべき道が見えなくなってしまったからだ。人は簡単に死んでしまうと言うのに、ただ一人の存在が消えただけで目の前が真っ暗になったみたいになる。親だから、余計にそう思うのかもしれない。
身近に居た人だからこそ思ってしまう。どうして神様は助けてくれなかったの、と。結局辿りつく先は責任の擦り付けだと言うのに。
分かってる筈なのに認めたくない。ああ、はずかし。なんて私は罪深く強欲なんだろうな。大切な人を失って悲しむのは私一人じゃないのにさ。
黙ってしまったアルフレッドに申し訳なくて、私は椅子から立ち上がった。かつかつ、と靴を鳴らして数歩歩けば、顔を伏せた彼に直ぐ手が届く。
ごめんね、明日は大切な日なのにこんな話をしちゃって。そんなに気難しい顔をさせたかった訳じゃないんだ。だからほら、スマイルスマイル。
「アルフレッド、顔上げて」
「…君はどうして平気そうなんだい?昨日の今日なんだろう?」
「うん、内心すっごく泣きたい気分だよ。でもこんな大事な時に泣き叫ぶ訳にはいかないよ。母さんもきっとそう思ってる」
もちろん父さんだって、と眉尻を下げるアルフレッドに呟く。そう、こんな大事な時に悲しんでなんかいられない。
明日はこの国に国民に私に、そして彼にとって大切な日になるだろう。アメリカと言う国の歴史が大きく動く時、それがきっと明日だ。
それなのに国である彼が悲しんでいるのは国民にとって良くない影響を与えるだろう。笑って堂々と新しい旗を背負って、彼は宣言しなければならないのだから。
ぽつりとまたごめんね、と呟くと、アルフレッドは目尻を細めて私に手を伸ばす。ふ、と触れた右手はちょっとかさついていた。
「、君は神様が居ないと思うかい?」
「…分からないよ。でもやっぱり空想だと思っちゃうね」
「そうかい?…君の中には居ると思うけどな、神様」
「えー?」
なにそれ、変なの。私の中に居たんじゃ他の人達に恩恵を与える事なんて出来ないじゃない。
むに、と両手で彼の頬を掴んで引っ張り、口をへの字に曲がらせる。痛いと呟かれた言葉は軽く無視して続けたら、アルフレッドも同じように私の頬を引っ張ってきた。痛い、こら何するの。
さらさらふわふわのブロンドが混じり合ってどっちの髪なのか分からない。私の髪がまるで金の糸みたいにアルフレッドに流れ落ちる。うっとおしそうに掻き分けられたので後ろ髪も追加してやったら怒られた。
でもその怒った声も次第に途切れて、二人で笑い合う。何してるんだろうね、私達。じゃれ合いとか?…ばか、それ子供みたいじゃない。
すとんとアルフレッドの足に腰を落とすと、ずり落ちないように抱きかかえられた。小さい頃からしてたそれは目線が高くなった今でも時々やっていて、多分これが最後なんじゃないかなと思った。だって明日からはもっと彼は忙しくなってしまうから。
床についてしまいそうなスカートを手繰り寄せてこてり、とアルフレッドの肩に頭を乗せる。そしたらよしよし、と頭を撫でてくれた。くすぐったい。
「まあいいや、アルフレッドがそう言うのなら、今後のアメリカの為にお祈りしてあげよう」
「勝利の女神って奴かい?」
「あはは、そうかもねー。そして一段落着いたら散々泣くと思うから、その時は肩貸して頂戴」
「お安い御用さ!」
うん、じゃあそれまで涙は取っておく事にするよ!
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最近の調査によるとアルの家の人の八割が神様を信じてるらしい。
[2010.03.23]
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